移植するために育てた若くて小さな木。種子から育てた実生(みしょう)苗や挿木(さしき)から育てた挿木苗のほか、接木(つぎき)苗、取木(とりき)苗などがある。天然に生育した木は稚樹または幼樹といわれ、掘り取って植栽用に使うこともある。これを山引き苗という。普通、苗畑で何回か植え替える床替えが行われるが、その回数は樹種や苗木の生育状態により異なる。床替えまでは実生苗は播(ま)き付け苗、挿木苗は挿し付け苗とよび、床替えしたあとはいずれも床替え苗とよぶ。
植栽用の苗木は形質のよい母樹からつくられる。植栽前にほぼ同じ大きさの苗木が選ばれ、山行き苗または山出し苗という。苗木は植栽に適した健全な形、とくによい根をもつように育てることがたいせつで、床替えのときに根切りをして細根量を増やしたりするのもこのためである。貧弱な根をもつ苗は、移植後の吸水量が少なく葉からの蒸散による水分消費をまかなうことができず、活着までの間に乾燥死してしまう。活着までの間の乾燥を防いだり植林期間を延ばす目的でポットに種子を播き付けて育てる方法もある。
2000年代に入るとコンテナ苗も注目されるようになってきた。コンテナ苗は、多数のキャビティ(育成穴)からなる硬質樹脂製のコンテナのキャビティに培地を充填(じゅうてん)して育苗した土付きの苗木である。コンテナ苗は根が充実していることが特色であるが、ポット苗以上に苗木代は高く、ポット苗と同様に運搬にコストがかかる。しかしポット苗もコンテナ苗も植栽時期の制約が大幅に緩和されることなどの利点がある。
[蜂屋欣二・藤森隆郎]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…林を仕立て育てること。育林とほぼ同じ意味で使われることもあるが,人工造林とくに苗木の植栽を意味する場合に用いられることが多く,植栽してからの手入れ(保育)や天然更新も含めていることを強調する意味では育林を使うほうがよい。もともと森林がなかった場所や,森林が切られてからかなりの年月がたった場所に林を仕立てる場合afforestationと,森林を伐採したあとにすぐ次の林を仕立てる場合reforestationとあり,後者は更新とよぶのが普通であるが,更新を造林と同義に用いる場合もある。…
…作物栽培や植林を行う場合に畑や林地に植えつける若い植物を苗といい,木本植物の苗をとくに苗木と呼んでいる。また,苗を育成することを育苗といい,育苗を行う場所を苗床(イネの場合は苗代)という。…
…中央本線が通じ,中央自動車道中津川インターチェンジ,恵那山トンネルがあり,国道19号,257号,363号線が集中する交通の要地で,中央本線の複線電化や中央自動車道の開通などで名古屋への通勤も可能である。北部の苗木地区は近世には遠山氏1万石余の城下町であり,明治初年の廃藩置県で苗木県庁が置かれた。城跡に前田青邨(せいそん)記念館がある。…
※「苗木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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