一角(読み)ヒトカド

デジタル大辞泉 「一角」の意味・読み・例文・類語

ひと‐かど【一角/一廉】

[名]
ひときわすぐれていること。いっかど。「―の人物
それ相応であること。一人前であること。「―の理屈を並べ立てる」
一つ事柄。一つの方面
「詳慎精密にこの―を究察し」〈中村訳・西国立志編
[副]相当に。いっぱし。
「君は―悪者がっているが」〈志賀暗夜行路
[類語]優越優秀優等優れる秀でる偉い秀逸錚錚そうそう長ずるける粒揃い良い良好良質優良有数粒選り選抜簡抜抜粋精選厳選特選選り抜き一粒選り選り抜く白羽の矢が立つ一人前一丁前

いっ‐かど【一角/一廉】

[副]
相当にすぐれているさま。格段。ひとかど。「―の人間
まだ未熟な者が一人前のようにふるまうさま。
おのれ畜生なりと思はずして―人間立てをするこそ」〈艶道通鑑・五〉
[類語]優越優秀優等優れる秀でる偉い秀逸錚錚そうそう長ずるける粒揃い良い良好良質優良有数粒選り選抜簡抜抜粋精選厳選特選選り抜き一粒選り選り抜く白羽の矢が立つひとかど

いっ‐かく【一角】

一つのかく。「三角形の一角
一つの隅。片隅一部分。「氷山一角」「画壇一角地歩を固める」
1本のつの。
クジラ目イッカク科の哺乳類。体長3.6~5メートルで、雄では上あごの左の門歯が左ねじりに角状に伸び、長さ2.8メートルに達する。北氷洋分布ウニコール一角獣
《形が長方形のところから》一分銀いちぶぎん異称
「われらが―も心入れは同じ事ぞかし」〈浮・永代蔵・一〉
[類語]一隅片隅かどすみ隅っこ端っこ稜角突角

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「一角」の意味・読み・例文・類語

ひと‐かど【一角・一廉】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 一つの事柄。一つの方面。一つの分野。
      1. [初出の実例]「上意年年無未進御進納之時者、一角も御申候て、御恩にも可閣候」(出典:上杉家文書‐文明四年(1472)三月八日・雲照寺妙瑚書状)
    2. ひときわすぐれていること。ひときわ目立つこと。
      1. [初出の実例]「又一かどある歌を有文と申と云説もあり」(出典:九州問答(1376))
    3. ( 多く「ひとかどの」の形で用いる ) 並以上に量の多いこと。相当であること。
      1. [初出の実例]「一かどの勧賞にもあづからん」(出典:仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)一)
    4. ( 多く「ひとかどの」の形で用いる ) 並すぐれていること。また、一人前であること。
      1. [初出の実例]「一ト廉(カド)の学問を研かぬほどは」(出典:ゆく雲(1895)〈樋口一葉〉上)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 相当に。相応に。人並みに。いっぱしに。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「子日とて一かといはふ小松かな〈道二〉」(出典:俳諧・毛吹草(1638)五)
    2. 「君は一トかど悪者がって居るが」(出典:暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉一)

一角の語誌

( 1 )カドは才能の意。このカドは、中世には衰退傾向にあったらしく、ヒトカドなどの複合語の構成要素に見られるのみになっている。
( 2 )類義語にイッカドがあげられる。古く、ヒトカドとイッカドとどちらが優勢だったかは未詳だが、イッカドのほうが口語的であったと思われる。しかし、明治後期にはヒトカドの用例が多く見られるようになり、ヒトカドがイッカドにかわって一般語としての地位をえたものと推測される。→一廉(いっかど)


いっ‐かく【一角】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 一つのすみ。かたすみ。また、一部分。
    1. [初出の実例]「雪峰は徳山の一角なり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)古鏡)
    2. 「いつまでも新鮮に記憶の一角に残った」(出典:瓦礫の中(1970)〈吉田健一〉八)
  3. 一つのかど。一つの角(かく)
  4. 際立ってすぐれた特質。ひとかど。いっかど。
    1. [初出の実例]「その時の天子の別立とをしなりたぞ。別に一角(カク)立てた者と云心かぞ」(出典:玉塵抄(1563)一)
  5. ( 長方形の形から ) 一分金の異名。一分。
    1. [初出の実例]「くたり盃一つ、焼物一貝とりて一角(カク)(ばかり)とらせて」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)二)
  6. 一本のつの。
    1. [初出の実例]「牛もし一角に触るればその罪おのづから消滅す」(出典:正法眼蔵(1231‐53)袈裟功徳)
  7. イッカク科の哺乳類。イルカに類似し、体長約五メートル。雄の上あごにある一対の歯のうち、一個が前方に二メートル以上ものび、角状となる。雌は二歯とも発達不完全。背びれはなく、背面に多くの小さな黒斑がある。北極海に分布。雄の長い歯は、古くは解毒剤として珍重された。一角獣。〔和漢三才図会(1712)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

動植物名よみかた辞典 普及版 「一角」の解説

一角 (イッカク)

学名Monodon monoceros
動物。イッカク科の小形の歯クジラ

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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