改訂新版 世界大百科事典 「カリタス」の意味・わかりやすい解説
カリタス
caritas[ラテン]
愛,神愛,愛徳などと訳す。〈神は愛である〉という信仰宣言のなかにキリスト教のすべてがふくまれているともいえるが,その〈愛〉(ギリシア語でアガペーagapē)のラテン語訳がカリタスである。したがって,カリタスはイエス・キリストの十字架において啓示された,人間に注がれる神の愛,およびそれにこたえて人間が神と隣人に示す愛を意味する。信仰に始まり,希望によって強められる神への歩みは,愛徳(カリタス)において完成されるのであり,これら三つは〈キリスト教的徳〉あるいは〈対神徳〉と呼ばれる。カリタスにあたる英語チャリティcharityは,現在では困窮者のための慈善行為という意味で用いられることが多いが,カリタスは本来,神とすべての人間を包みこむ大いなる友愛であることを忘れてはならない。
→愛
執筆者:稲垣 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報