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十字架 じゅうじか crux; cross

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

十字架
じゅうじか
crux; cross

古代世界のあらゆる文化層において,装飾形態あるいは象徴形態などなんらかの印としてしばしば表わされている。なかでもエジプト美術においてはアモン神レーが上部に輪のついた十字架アンクを持つ図で表現されており,その十字架は永遠の生命を象徴するものであり,のちのキリスト教の十字架が意味するものと最も近い例である。

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デジタル大辞泉の解説

じゅうじ‐か〔ジフジ‐〕【十字架】

木を十字形に組み、罪人を磔(はりつけ)にするときに用いた処刑道具。
《イエスが磔にされたところから》キリスト教を象徴する十字形のしるし。贖罪(しょくざい)の犠牲、罪や死に対する勝利、また苦難を表す。早くから礼拝の対象とされた。クロス。クルス。
罪の意識や課せられた苦難などをたとえていう語。「重い十字架となって背中にのしかかる」

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百科事典マイペディアの解説

十字架【じゅうじか】

古代地中海世界の磔刑(たっけい)具。古くから諸民族に種々の形で存在し,十字架刑は最も残酷な重刑の一つであった。イエスキリストの磔刑後キリスト教のシンボルとなり,人類救済の犠牲の祭壇,苦難また死と地獄に対する勝利を象徴する。
→関連項目十字

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世界大百科事典 第2版の解説

じゅうじか【十字架 Cross】

古代地中海世界に見られた磔刑具であるが,とくにイエス・キリストがかけられたものをいう。十字架を重罪人の磔刑具として用いたのはおそらくフェニキア人が最初であろう。それはのちにひろく各民族間にも用いられるようになったが,ローマ人はそのありさまがあまりに残酷なので,奴隷や凶悪犯人のほかは磔刑に処さなかった。キリストもまた大罪人として十字架にかけられた。キリスト教を公認したコンスタンティヌス1世(大帝)は,337年,磔刑を禁止し,そののち十字架はキリスト教世界で人類救済の犠牲祭壇,また死と地獄に対する勝利の象徴となった。

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大辞林 第三版の解説

じゅうじか【十字架】

罪人をはりつけにした処刑具。木を十文字に組み合わせたもの。 「 -にかける」
〔イエスが磔刑たつけいにされたことから〕 十字の形をしたもの。キリスト教の象徴。特に、贖罪・自己犠牲・愛などのしるしとして崇敬の対象とされる。クロス。クルス。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

十字架
じゅうじか
Staursギリシア語
cross英語

十字に組み合わせた木を用いた処刑の道具。これによりイエス・キリストが処刑されたことから、キリスト教の象徴になる。[鈴木範久]

苦難や死・罪からの解放

十字架に罪人の体を縛り付け、ときには両手を釘(くぎ)で打ちつけたりする処刑方法は、フェニキアをはじめ古代諸国で行われていた。ローマでは、奴隷や凶悪犯に使われた。ユダヤ地方を治めていたローマ総督ピラトにより、イエスは強盗犯人2人とともに十字架で処刑された。このことは、イエスが卑しい人間の扱いを受け、極刑に処せられたことを表す。『新約聖書』のイエスの伝記である福音書(ふくいんしょ)では、十字架ということばが、早くも重荷・苦難などを意味するものとして用いられている(「マタイ伝福音書」10章38、16章24)。あるいはまた、恥多き死や屈辱に対する忍耐(「ヘブル書」12章2)を表すこともある。同じ『新約聖書』の「パウロの書簡」になると「わたしの内の古き人はキリストと共に十字架につけられた」(「ロマ書」6章6)のように、古きものの死、罪からの解放を表すものになっている。この世的なるものや肉の情欲にとらわれていた自己に、死んで新しい生の世界が与えられたことのしるしとされる。「エペソ書」や「コロサイ書」では、イエスの十字架の死が、神との和解であるという贖罪(しょくざい)思想がみられる(「エペソ書」2章16、「コロサイ書」1章20)。
 十字架をもってキリスト教の象徴としたことは、迫害下に地下の墓地(カタコンベ)に設けられた教会の壁などに、その形が描かれていることでわかる。コンスタンティヌス帝が、空に十字架のしるしと「このしるしで勝て」と書かれた文字を見て、十字架を軍旗としたという話は名高い。[鈴木範久]

礼拝の対象

十字架は、やがてキリスト教の象徴であるだけにとどまらず、礼拝の対象となった。初めは十字架だけが祭壇に置かれたが、のち、キリストの磔(はりつけ)像を伴うようになった。そのキリスト像には王冠をつけ、罪・死に対する勝利者としてのキリストから、人類の救済のため、贖罪の苦難のキリストへ、という変遷もみられる。
 復活祭前の金曜日は、キリストが十字架につけられた受難日、受苦日とされ、ローマ・カトリック教会では十字架に接吻(せっぷん)する儀式が執り行われる。指で十字架のしるしをつくる儀礼は、「父と子と聖霊の御名(みな)によりて」を唱え、ローマ・カトリックでは額、胸、左肩、右肩の順、東方教会では額、胸、右肩、左肩の順でなされる。十字架のしるしを切ることは、神の恩寵(おんちょう)にあずかる秘蹟(ひせき)(サクラメント)に準ずるものとされている。また、ときには、十字架が悪魔払いに用いられることもある。なお、プロテスタントでは、この十字架のしるしをつくらないし、十字架像を崇拝の対象とすることもしていない。[鈴木範久]

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世界大百科事典内の十字架の言及

【錨】より

…墓に付された錨の印は,死者が永遠の平和という港へと無事到着したであろうことを示すものであった。その形は,垂直の軸に2本の腕がついた実際の錨(しばしば縄を通すための輪が付く)をかたどったものが多いが,キリスト教の迫害時代には,水平の腕を加えることによって,ひそかに十字架に擬せられ,ときにイルカとともに表された。七つの美徳の一つ〈希望〉の持物でもある。…

【市】より

…市場は町の中央にあり,石で舗装されている場合も多かった。北ドイツの都市の市場にはローラン(ローラント)の像が立っているが,これは都市の特権と自由のしるしであり,市場平和のしるしとしての十字架も同様の意味をもっており,ときには王が市場の自由を承認したしるしとして,この十字架に手袋がかけてあった。カール大帝以来開市権は王の大権(レガーリエン)に数えられ,王の特許状をえてはじめて市の開設が認められたからである。…

【木】より

…このカバラの木は,ルネサンス以降の神秘主義者たちに受け継がれ,超越的源泉からの宇宙の生成の象徴図となった。 このほか,ヨーロッパのメーポールMaypole,ナバホ・インディアンのアシ,日本における神道のサカキも,そこに神性が宿る宇宙軸のシンボルの一種であり,十字架も,このような中心のシンボリズムの発展の一つであるといえよう。
[生命と豊饒のシンボル]
 木はまた地母神のもつ豊饒な生産力の象徴となってきた。…

【キリスト教】より

…しかし,われわれが現在何の抵抗も感じないで使っている言葉のなかには〈世俗化〉されたキリスト教の用語が多くふくまれている。代表的なものとして〈十字架〉〈復活〉〈福音〉〈バイブル(聖書)〉〈三位一体〉〈洗礼〉〈終末〉〈天国〉などを挙げることができよう。これらの言葉がしばしばキリスト教的起源をはっきり意識しないで用いられている事実(たとえば苦痛や犠牲を〈十字架〉,必読書を〈バイブル〉などと比喩的に呼ぶ場合)は,ある意味でキリスト教の土着化のしるしとみなされよう。…

【十字架伝説】より

…キリストがかけられた十字架に関する初期東方伝説。アダムが死んだとき,その子セツSethは神の命により天国の生命の樹から三つの種子を採り,アダムの舌の下に置いた。…

【緑】より

…緑は生命の復活を示す色であり,成長と繁栄の色である。西洋中世の色彩芸術で,十字架につけられたキリストのその十字架がしばしば緑色であるのは,キリストの復活を象徴するものにほかならない。他方悪魔の体や眼を緑彩色することもまれにあり,これは悪魔の象徴とされる蛇が緑色だからだと説明される。…

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