改訂新版 世界大百科事典 「クッターブ」の意味・わかりやすい解説
クッターブ
kuttāb
〈学校〉を意味するアラビア語。一般に,コーラン暗誦を中心とする初等教育施設をいう。マクタブmaktabも同義語として用いられたが,後者は現代では,近代教育制度の中での小学校を指すことが多い。これに対し,マドラサは高等教育施設をさす。イスラムの歴史のごく初期から初等教育に関する記録はあり,ジャーヒリーヤ時代にまでさかのぼる。伝統的なクッターブは,ほとんどの場合,政治権力の統制外にあり,町でも村でも望みさえすればだれもが通える程度に普及していた。そのカリキュラム,教育程度,修学年限,施設の規模などまったくまちまちで,コーラン暗誦を中心とすること以外に定まったものはない。初等数学や習字をカリキュラムに含む場合が多く,教師1人に生徒数十人が一般的な姿である。施設に付属する財産はないのが普通で,生徒の両親からの謝礼金が教師の収入であった。20世紀になって近代教育制度の普及とともに,伝統的なクッターブは消滅しつつある。
執筆者:後藤 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報