財産(読み)ざいさん

精選版 日本国語大辞典 「財産」の意味・読み・例文・類語

ざい‐さん【財産】

〘名〙
財貨資産。所有する土地、家屋、家具、金銭貴金属など。身代(しんだい)
※本朝麗藻(1010か)下・贈心公古調詩〈具平親王〉「夜使財産。明也東西奔」
※太平記(14C後)一七「山門の衆徒財産(ザイサン)を尽くして」 〔後漢書‐斉武王伝〕
② ある人に属する金銭的価値あるものの総体動産、不動産のほか、権利、義務のすべてをいう語。一般には資産(積極財産)だけをさすが、負債消極財産)を含む場合もある。
※仏国政典(1873)〈大井憲太郎訳〉三「財産とは凡て一人一己の私有と為し得可き諸物」
③ 比喩的に、金銭を産みだす源となる技術や能力など。「信用は大切な財産である」
[語誌](1)漢籍に見える語であり、日本でも平安後期から室町時代の文献に用例を確認できる。しかし、江戸時代には、「進退」から派生した「身代」や、「身の上(みのうえ)」を音読した「身上」が専ら用いられた。
(2)明治時代には、西洋の書物の翻訳、特に西洋の法律書の翻訳の中で再び「財産」が用いられるようになる。ヘボンの「和英語林集成」では改正増補版(明治一九年)から登載されるようになった。

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デジタル大辞泉 「財産」の意味・読み・例文・類語

ざい‐さん【財産】

個人団体などの所有している、金銭・有価証券や土地・家屋・物品などの金銭的な価値のあるものの総称。資産。「一代財産を築きあげる」「子供財産を残す」
ある主体に属する積極財産(資産)と消極財産(負債)の総体。「営業財産
あるものにとって、価値あるもの。金銭的価値にも精神的価値にもいう。「健康が私の財産です」「自然は人類共有の財産だ」
[類語](1資産資財財貨貨財私産私財家産家財身代しんだい身上しんしょう恒産

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「財産」の意味・わかりやすい解説

財産
ざいさん

人間の社会的・経済的な欲望を満たす手段。私法上はさまざまな意味に用いられる。

(1)いわゆる財産権の対象となる有形・無形の個々の財貨。有体物(不動産・動産)、債権、無体財産権(著作権・特許権など)などがある。

(2)ある人(法人を含む)に属する(1)の意味の財産の総体。ある人のもつプラスの資産を言い表すのに用いられる。限定承認の場合に、相続人が「相続によって得た財産の限度においてのみ」被相続人の債務と遺贈を弁済すればよいとしている(民法922条)のはこの意味である。

(3)ある人に属する積極(プラス)の財産と消極(マイナス)の財産の総体。「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(同法896条)という場合の「財産」はこの意味である。営業財産という場合も同じ。

[高橋康之]

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世界大百科事典 第2版 「財産」の意味・わかりやすい解説

ざいさん【財産 property】

財産は,一般に金銭その他の利益をもたらす有形・無形の対象を指していわれるが,学問上は,その内容は各領域によって異なり,その意義を共通に定めることはむずかしい。財産は,経済学上は簿記用語として用いられるし,法律上は,憲法に財産権の保障の規定(憲法29条)がみられるし,刑法では財産刑の対象となるが,最も多く用いられる法領域は民法,商法および各種の税法である。 簿記用語としては,財産とは一定会計単位組織の有する権利・義務のすべてを含むものとされ,それらは,積極財産(資産)と消極財産(負債)とに分類される。

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百科事典マイペディア 「財産」の意味・わかりやすい解説

財産【ざいさん】

種々の意味に用いられる。第1はいわば経済学的用法で,人間の経済的・社会的欲求を満足させる有形無形の手段を意味する。この意味における財産は財産権の客体をなす。第2に,個々の財産権,第3に,特定の主体に属する積極財産(資産)・消極財産(負債)の総体をさして用いられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「財産」の意味・わかりやすい解説

財産
ざいさん

法律上は,個々の財産権と同じ意味でいわれ,特定の主体に属する財産権の総体を意味することが多い。もっとも,この意味での財産についても,積極財産 (資産) だけを意味する場合と,積極財産と消極財産 (負債など) の双方をも含む場合とがある。 (→私有財産制 )

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普及版 字通 「財産」の読み・字形・画数・意味

【財産】ざいさん

資産。

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世界大百科事典内の財産の言及

【所有権】より

…特定の物を排他的に支配し,使用・収益および処分の機能を有する権利。〈排他的に〉ということは,その権利を何ぴとに対しても主張しうるし,その権利を侵害された場合,排除しうることを意味する。〈支配する〉は〈請求する〉に対立し,権利行使の態様に関する表現である。債権が,特定人が他の特定人に対し一定の行為を請求する権利であるのに対し,物権に属する所有権は特定の物を排他的・全面的に支配する権利である。物とは有体物,たとえば動産・不動産をいう(民法85条)。…

【所有権】より

…特定の物を排他的に支配し,使用・収益および処分の機能を有する権利。〈排他的に〉ということは,その権利を何ぴとに対しても主張しうるし,その権利を侵害された場合,排除しうることを意味する。〈支配する〉は〈請求する〉に対立し,権利行使の態様に関する表現である。債権が,特定人が他の特定人に対し一定の行為を請求する権利であるのに対し,物権に属する所有権は特定の物を排他的・全面的に支配する権利である。物とは有体物,たとえば動産・不動産をいう(民法85条)。…

【家財】より

…史料上の用語に照らしてみると,家財という語を,住居としての家に蓄えられた財産の意味に理解する場合と,日本の家族制度である“家”に伝えられる家産の意味に理解する場合とに区別しておく必要がある。前者の意味で理解する場合には,すでに平安時代のころから,史料上にその存在を発見することが困難ではない。…

【婚姻】より

…たとえばナンディ族(ケニア)で,息子をもたない未亡人は,嗣子を得るため,普通の結婚と同じ形式にしたがって〈妻〉を迎える。父系制をとるナンディ族では,家畜や土地などの財産を父から息子へ均分相続で伝えるが,息子をもたず死亡した男の財産はいったん妻が保有する。この財産を亡夫の弟など傍系の父系親族に渡さず,みずから亡夫の身代りとなって〈妻〉をめとり,後継者を確保するのである。…

【所有権】より

…物とは有体物,たとえば動産・不動産をいう(民法85条)。この点で,所有権は無体物の支配権である無体財産権(特許権,意匠権,実用新案権,商標権,著作権など)と異なる。使用,収益,処分は所有権の効力の代表的な現象を指すのであって,所有権者は,このほか,たとえば改良,担保権設定その他,いわば自分の物であるからどんなことにでもそれを使うことができる。…

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