コルキス王国(読み)コルキスおうこく

改訂新版 世界大百科事典 「コルキス王国」の意味・わかりやすい解説

コルキス王国 (コルキスおうこく)

コルキスKolchisは古代ギリシア人がグルジアの黒海南東岸を呼んだ名称で,グルジア語ではコルヒダ,自称はエグリシーEgrisiである。コルキス人はグルジア人の一種族で,この民族は前12世紀にアッシリアと戦ったと思われ,ワン湖岸のウラルトゥ碑文(前8世紀)には明らかにこの民族の名コルカが刻まれている。ギリシア人は前7世紀よりコルキスにディオスクリア(現,スフミ),ファシス(ポチ)などの植民市を建設し,70の別々の言葉を話すといわれたカフカス系の種族と交易を行った。コルキス王国は,前6世紀に興り,前2世紀まで続いたが,領域はリオニ川流域を中心に西グルジア全体に及んだ。コルヒダキと呼ばれる多種多様な銀貨アレクサンドロス大王や後継者のものをまねた金貨が発行された。前2世紀からは,ポントス王国とローマによって政治的独立を失ったが,織物,蜜蠟,ピッチの生産地,東方物産の交易中継地として経済的には繁栄した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコルキス王国の言及

【カフカス】より

… ザカフカス最初の国家はウラルトゥであった(前9~前6世紀)が,メディア,スキタイ連合軍に滅ぼされた。ギリシア人は古くから西グルジアに移住しており,前6世紀にはその影響下にコルキス(エグリシー)王国が成立した。アルメニアにはアケメネス朝とアレクサンドロス大王の宗主権下にエルバンド(オロンテス)朝王国が,前4世紀には東グルジアにイベリア王国が成立した。…

※「コルキス王国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android