金を素材とする鋳貨。最古のものは紀元前7世紀ごろリディア王国で鋳造されたといわれ、日本では現存のもののなかでは豊臣(とよとみ)秀吉が鋳造した天正(てんしょう)大判が、品位、大きさなどの点でとくに有名である。金本位制度のもとでは、貨幣1単位の実体的内容を一定の量目、純分の金により規定し、政府がその内容を明示する刻印を打った鋳貨をつくって正貨としていたが、現在これを流通させている国はない。日本の旧貨幣法(明治30年法律16号)は、「純金ノ量目七百五十ミリグラムヲ以(もっ)テ価格ノ単位ト為(な)シ之(これ)ヲ円ト称ス」ることを定め、20円、10円、5円の3種の金貨を製造し、「金貨幣ハ其(そ)ノ額ニ制限ナク法貨トシテ通用ス」るとしていた。しかし、金貨は鋳造はされたものの、現実にはほとんど流通しなかった。
[堀家文吉郎]
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…すなわち紙あるいは羊皮紙の間に金を挟み,たたいて延ばしていくという製箔技術が,ヨーロッパでも日本でもほぼ同じ12~13世紀に登場するのである。 以上のような金利用をめぐる人間模様は古代から中世にかけて出そろうが,このほかにも金はそれ自体としてつねに財産としての機能と意味をもちつづけてきていること,あるいは金貨すなわち貨幣として鋳造され,流通をみた歴史もあるということ,また,西欧錬金術の長い間の試行錯誤が近代科学を発達させる直接の導因となったという事実なども忘れてはならない。そして今日,今度は逆に,発達した近代科学がまさに科学的に金のさまざまな知られざる特性を発見することによって,広く工業,装飾用ばかりでなく,宇宙産業にまで及ぶあらゆる分野で,金の新たな利用と活用がみられるに至っている。…
…本位貨幣(または正貨)との兌換が保証されている銀行券,正しくは兌換銀行券といい,兌換が停止された不換銀行券に対立する用語。政府紙幣も金貨兌換の約束で発行された場合もあったが,結果的に兌換が行われた場合はきわめて少なく,兌換券には政府紙幣を含めないのが通説である。兌換銀行券は金貨本位制下の中央銀行によって発行され,金貨との自由兌換が保証されることによって金貨に代わって流通し,金貨本位制の機能を維持していた。…
…一国の貨幣制度の基礎として,その額面価値と等価値の金属で鋳造された貨幣をいう。たとえば金本位制度における金貨がそれである。金本位制の場合,各国の貨幣の単位(ポンド,ドル,円など)は金の分量によって表示されていた。…
※「金貨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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