日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴーダーン」の意味・わかりやすい解説
ゴーダーン
ごーだーん
Gōdān
インドの小説家プレームチャンド作のヒンディー語の長編小説。『牛供養』と訳される。1936年刊。農民ホーリーの生活を克明に描いたもの。幸福な家庭を営んでいたホーリーが雌牛を買ったことから不幸が始まる。別家した弟が雌牛を毒殺して家出をし、息子は牛飼いの出戻り娘と結ばれる。弟をかばう、他種姓の息子の嫁を家に入れたことで村八分にされるなどの事件のたびに貧しさを増し、死に際しては牛供養の金もないほどの貧窮ぶりであったが、事件のたびごとに自己のダルマdharma(宗教的義務)と信ずる道を頑固に守り続け、心の満足を得る。一方、都市生活も描かれているが、ここでの中心人物は女医マールティーである。美貌(びぼう)を売り物にあくどく稼いでいたが、哲学教授の感化を受けて奉仕の心に目覚め、農村救済に献身する。
[土井久弥]
『土井久弥訳『世界文学大系4 インド集 牛供養』(1959・筑摩書房)』