村八分
むらはちぶ
村社会の秩序を維持するため,制裁として最も顕著な慣行であった絶交処分のこと。村全体として戸主ないしその家に対して行なったもので,村や組の共同決定事項に違反するとか,共有地の使用慣行や農事作業の共同労働に違反した場合に行われる。「八分」ははじく,はちるの意とも,また村での交際である冠・婚・葬・建築・火事・病気・水害・旅行・出産・年忌の 10種のうち,火事,葬を除く8種に関する交際を絶つからともいわれ,その家に対して扶助を行わないことを決めたり,村の共有財産の使用や村寄合への出席を停止したりする。八分を受けると,共同生活体としての村での生活は不自由になるため,元どおり交際してもらう挨拶が行われるが,これを「わびを入れる」という。農業経営の近代化に伴い,各戸が一応独立的に生計が立てられるようになってからは,あまり行われなくなった。
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むら‐はちぶ【村八分】
〘名〙
① 江戸時代以降行なわれた
私刑的な慣習で、村のおきてに違反した者に対して、一切の取引・交際を絶つこと。「はちぶ」については、喪事・火事の二つの場合だけは例外とするところからいうとする説や、仲間からはずす、はねのけるなどの語からきたものであるとする説などがある。むらはずし。むらはじき。むらはね。
※俳句の世界(1954)〈山本健吉〉二「この秩序の攪乱者は、村八分の制裁を受けねばならなかったのである」
② 転じて、一般に仲間はずれにすること。
※新西洋事情(1975)〈深田祐介〉植民都市歓迎の背景「田舎者根性のもうひとつの特色は、いわゆる村八分を生みだしたりする、共同体志向ということなんじゃないか、と思うんですが」
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村八分【むらはちぶ】
八分とも。村の秩序を乱した者に制裁として交際を断つこと。火事と葬式の二つを除いた八分の交際を断つ意ともいうが,〈はじく〉〈はぶく〉が語源らしい。普通村寄合の席で決まり,所によっては赤ずきんをかぶせたり,村から退去させる。有力者を仲介に立て,酒食を提供して詫(わび)を入れると許されるが,以後ほとんど発言権はなくなる。現代では法律上,共同絶交とも呼ばれ,人権侵害の違法行為とされ脅迫罪などに該当するが,村落共同体の規制力が弱まるにつれ無力化した。
→関連項目脅迫罪|私刑|村寄合
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デジタル大辞泉
「村八分」の意味・読み・例文・類語
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村八分
むらはちぶ
江戸時代の村の農民に対する制裁
村ばね・村はぶきともいう。放火・殺人・共同作業の怠慢・盗みなどの非行によって,葬式と火事の二分を除いたほかは,村民から絶交される処分。入会 (いりあい) 権などを失い,事実上村生活が不可能になった。
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むらはちぶ【村八分】
日本の村落社会において伝統的に行われてきた制裁の一種で,ムラの決定事項に違反した人物なり家との交際を絶ち,孤独な状態に追いやるもの。より一般的には,村落社会で執行されてきた制裁の総称。〈村八分〉とは,家々の重要な交際の機会10種類のうち,火事と葬式をのぞく8種類の交際を絶つことからいうのだとする俗説が広く流布しているが,根拠はない。ハチブはハブクとかハズスという言葉と関連するものと思われる。ムラがムラの秩序を破った者に対し一定の制裁を加えることは古くから行われてきた。
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世界大百科事典内の村八分の言及
【脅迫罪】より
…告知する害悪の内容は条文に列挙されたものに限られる。判例では,いわゆる〈村八分〉が名誉に対する害悪の告知として脅迫罪になるとされているが,異論もある。人を脅迫する行為は,なんらかの行為を強要するために行われることが多いが,脅迫罪は,その目的を問題としていない。…
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