改訂新版 世界大百科事典 「スピー」の意味・わかりやすい解説
スピー
Spy
ベルギー中南部,ナミュール西方に位置する村。ベチュ・オ・ロチュ(〈岩のくちばし〉の意)と名づけられた洞窟前面の岩がオルノー川に臨んでいる。一般にはスピー洞窟と呼ばれる。1879年に発掘が始められていたが,スピーの名を高めたのは86年のド・ピュドトとローエストによる,ネアンデルタール人の発見であった。成人2体,幼児1体が出土し,キナ型ムスティエ文化層2枚,アシュール文化系ムスティエ文化層1枚が確認された。その上部に存在したオーリニャック文化およびフォン・ロベール型尖頭器を伴うグラベット文化(ペリゴール文化後期)の堆積層は,後期旧石器時代初頭の研究に貴重な資料を提供している。さらにマドレーヌ文化層も存在したようである。いくらかの遺物はソリュートレ文化を暗示させるが,この文化が盛行した証拠は他になく,問題を残している。
執筆者:山中 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報