フランス,ピレネー地方のオーリニャックAurignac遺跡を標準遺跡とする後期旧石器時代文化。この文化は寒冷期に出現し(第I期),やがて急激な気候温暖期をむかえる(第II期)。これはアルシー温暖期にあてられ,炭素14法によって3万0500年前ごろとされる。オーリニャック文化は,20世紀初頭,ムスティエ文化とソリュートレ文化の間に位置づけられ,その後H.ブルイユによって3期に区分された。さらにその前・中・後の各期はおのおのをシャテルペロン文化,オーリニャック文化,グラベット文化と呼ばれることになる。しかし他方この中期にあたるオーリニャック文化を第I~V期に細分し,それに並行してシャテルペロン文化とグラベット文化が一系列に連続して存在したとするD.ペイロニの説が提唱された。その説では後者をペリゴール文化と呼び,これもまた5期に細分される。ロジュリー・オートLaugerie Haute遺跡の層位,およびパトーPataud遺跡の発掘成果をみると,ブルイユ説よりもペイロニ説のほうが難点が大きいが,オーリニャック文化に関する編年学的問題はまだ解決されていない。オーリニャック型の石器の分布は極めて広い。西ヨーロッパのほか,バルカン,東ヨーロッパ,西アジア,アフガニスタン,中国,ケニアにも報告されているが,それらを同じ文化とする考えは今日ではとられていない。ベルギーからスペインまで,およびイタリアが分布域と考えられている。この文化の始まりは,骨製尖頭器と舟底形搔器の出現で特徴づけられ,後者は全時期を通しての指標となる。骨製尖頭器は幅広,基部割れ(第Ⅰ期)から菱形平面形(第Ⅱ期)となり,第Ⅲ期から第Ⅳ期には断面形が楕円形から円形になる。この文化を担ったのは新人であり,クロマニョン人は有名である。造形美術を残した最古の文化でもあり,フェラシーFerrassie遺跡出土の刻画石灰岩が知られる。
執筆者:山中 一郎
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フランス、ピレネー地方のオーリニャック遺跡を標準遺跡とする後期旧石器時代前半の文化。前・中・後期に区分されていたが、のちに前期はシャテルペロン文化、後期はグラベット文化とよばれるようになり、中期のみをオーリニャック文化とよぶようになった。またシャテルペロン、グラベットの両文化を技術的同系列と考え、連続的にペリゴール文化の名で把握し、それにオーリニャック文化が併行したとする学説もある。しかし、この併行学説は最近否定される傾向にある。
オーリニャック型の石器の分布はきわめて広い。西ヨーロッパから中国、およびアフリカのケニアからも報告されているが、それらを同じ文化とする考えは今日ではとられていない。西ヨーロッパでは3万年前ごろとC‐14の測定で年代が与えられるが、東ヨーロッパでは4万年前に近くなる。
舟底形掻器(そうき)、獣鼻形掻器などの分厚い石器に特色がある。石刃の剥離(はくり)が初めて普遍的に行われる。この文化の始まりは基部割れの骨製尖頭(せんとう)器の出現に特徴づけられるが、骨製尖頭器の形態変化は時期細分の指標となる。また美術作品を残した最古の文化で、古拙的な画像をもつ刻画石灰岩(フェラシー遺跡)などがある。ただ、「オーリニャックのビーナス」とよばれ、広い分布をもつ女性小像はすべてグラベット文化に属するものである。文化の担い手は新人で、なかでも1868年に発見されたクロマニョン人、2体が並んで屈葬されていたグリマルディ人はよく知られる。
[山中一郎]
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後期旧石器時代文化で,ヨーロッパが中心。名称はラルテーが,1860年にフランス,オート・ガロンヌ州オーリニャック洞窟を発見したことによる。ヴュルム第1間氷期から更新世(こうしんせい)末期まで続いた。主な石器は石刃(せきじん)(ブレード)であり,他に石匕(せきひ),石鑿(いしのみ),刻刀(ビュラン)などがある。南フランスおよび北スペインのいわゆるフランコ・カンタブリア芸術の初現も,中期オーリニャック期にあったといわれる。
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