改訂新版 世界大百科事典 「ソリュートレ文化」の意味・わかりやすい解説
ソリュートレ文化 (ソリュートレぶんか)
フランスのソリュートレSolutré遺跡を標準遺跡とする後期旧石器時代文化。2万年前頃の気候が温暖化しつつあった時期に始まり,温暖湿潤のラスコー休氷期(1万7000年前頃)まで続いた。その分布の中心はロアール川からピレネー山脈の間で,ローヌ川以西にあるが,スペインを含め,その周辺地域にも認められる。起源および文化浸透の問題をめぐり,石器製作技術の面からウクライナのコスチョンキ遺跡群,ハンガリーのセレタ文化,北アフリカのアテル文化と,おのおのの遺物が対比された。しかしそれらはすべて編年学的に時間差が大きいことが指摘され,今日ではソリュートレ文化のフランス起源説が強い。打製石器製作において史上最高の技術を示しており,打撃角の低い細部調整を両面ともに全面に及ぼして整形した尖頭器に特色がある。ドルドーニュ地方のルート,ロジュリー・オート両遺跡の層位と尖頭器の器形を基に,前・中・後期に細分される。スペイン南部では,小型翼付有茎尖頭器がこの文化に伴出し,石鏃とする説がある。骨角器は,先行したオーリニャック文化に比べると少ないが,骨製針はこの文化の後期に初めて出現する。美術品はソリュートレ文化には発見例が乏しいが,いくらか顕著なものもある。とくにロック・ド・セール遺跡の浮彫(バー・レリーフ)は,バイソンから馬および猪に主題が彫り変えられていて有名である。
執筆者:山中 一郎
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