ズバートフ主義(読み)ズバートフしゅぎ(英語表記)zubatovshchina

改訂新版 世界大百科事典 「ズバートフ主義」の意味・わかりやすい解説

ズバートフ主義 (ズバートフしゅぎ)
zubatovshchina

20世紀初頭のロシアで労働問題に関連してとられた政策。具体的には,当時の高揚した労働運動を弾圧のみでは押さえきれないとみた治安当局が,保安部の監視の下で一定の合法化された労働者活動を許し,それによって労働者の急進化を阻止し,体制側にひきつけようとした動きをいい,モスクワ保安部長官ズバートフSergei V.Zubatovの発案になるのでこの名で呼ばれた。1901年,モスクワで最初の官製組合がつくられ,以後ミンスク,キエフなどにもつくられた。労働者の支持を得るため,ある程度の賃上げやその約束も行われ,講演会なども開かれた。しかし,労働者への譲歩は企業家の反発招き,企業家を支持する大蔵省がこの方策難色を示した。また,ある程度活動の自由を認められた労働者は,保安部の当初の意図をのりこえて急進的となり,官製組合がかえって政治活動の基盤となる場合(たとえば,ガポンの設立した組合など)もあった。かくしてズバートフの企図は成功しなかった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android