ダストガー(読み)だすとがー

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ダストガー
だすとがー
dastghペルシア語

イランの古典音楽の旋法体系。微分音や中立音程をその構成音とするところに特徴がある。ダストガーは、個別名をもつ12の旋法(七つの主要旋法ダストガーと五つの副次的旋法アーバーズ)に整理されており、各旋法には、固有の音階と終止形フォルード、そして数種の旋律型グシェが含まれる。グシェとはダストガーの構成音域よりも狭い音域内で展開する旋律型で、固有の名称と情緒をもつ。グシェのなかにはダストガーの音階構成音以外の音を含むものもあり、その展開においてはしばしば転調的効果がもたらされる。だが、各グシェの終わりには、かならずそのダストガー固有の終止形が用いられて、全体の旋法的統一が図られる。演奏者は、季節、時間、場の雰囲気、気分などにあわせて、あるダストガーを選び、さらにそのダストガーに属すグシェのなかから数個を選んで基本旋律とし、伝統的順序に従いながら、その中心である即興による自由リズムの歌唱を展開させる。[山田陽一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のダストガーの言及

【イラン音楽】より

…今日のイラン古典音楽(ペルシア音楽)は直接的には19世紀のカージャール朝宮廷音楽が伝承されたものであるが,その源は中世イスラム世界の宮廷音楽の伝統にさかのぼる。その特徴は,半音より狭い微小音程を含む7音音階に基づく旋法の体系(ダストガー)と,アラブ・ペルシアの韻律法にのっとり作られたペルシア詩の古典詩の朗誦の結合である。アーバーズと呼ばれる歌唱様式によって,このダストガー音楽は体現されるが,アーバーズの主要部分は,むしろ拍節のない,伸縮自在のリズムにより,半ば即興的に演奏される。…

【音階】より

…しかし,実際には,音高の点でも多少の差異を含んでいるので,厳密なラーガの抽象化ではない。 イラン音楽ではダストガーdastgāhという概念が音階に最も近い。オクターブ音階の概念は本来イランにはなかったと考えられ,伝統的にはテトラコルドないしペンタコルドに基づく旋律型グーシェgusheを集合ないし抽象化して,オクターブに達する音階を理論的に抽出したものである。…

【マカーム】より

…その後この音楽文化をオスマン帝国が引き継いだため,トルコ音楽においても用いられる。ただし現代のイランでは,マカームの代りにダストガーdastgahというペルシア語が使われている。マカームにはいくつかの意味があり,〈音〉を意味する場合と,音列ないし音階とこれに基づく旋律法の規範を意味する場合とがある。…

※「ダストガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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