即興(読み)ソッキョウ

  • improvisation
  • そっきょう ソク‥
  • そっきょう〔ソク〕
  • 即興 improvisation

デジタル大辞泉の解説

その場で起こる興味。
「今宵限りの朧(おぼろ)だものと、―にそそのかされて」〈漱石虞美人草
その場の感興を即座に詩歌や音楽などに作ること。「即興の歌をよむ」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版の解説

遊戯本能を備えた人間は,だれもが〈即興〉の才能を持つといわれる。一般に,ある前提がある中で,その場の興味にしたがって即座かたちのあることを行う行為をさして〈即興〉という。それはゲームや座興などの日常行為から,音楽,演劇文学などにおける芸術の創造形式の一つと考えられるものまでも含むが,音楽に関しては〈即興演奏〉のにゆずることとして,ここでは以下,演劇における〈即興〉について述べる。 演劇では古くから方法として〈即興〉を意図的に使ったり,また〈即興〉の才能そのものを引き出したり涵養したりすることが,広く行われていた。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

その場の情景・出来事などに感じて起こった興味。
興にのって、即座に詩歌・楽曲などを作ること。 -で和歌を作る -の句

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

あらかじめ準備することなく、その場で思いのままにつくりだすこと。音楽、詩、演説のような、いわゆるミューズ的芸術についていわれるのが普通である。すなわち、日本語で「に即する」というのと同じく、西洋の伝統においてもミューズの女神たちの霊感の流露を重んじ、計画され推敲(すいこう)された作品にはない輝きを尊ぶ考えにたつ創造的活動である。フランスの哲学者ジャンケレビチによれば、即興に規則はなく、教えることができない。それは端的に「始める」ことであり、始まりは啓示されるほかはない。つまり想を生み出すというよりも、「生まれてくる」想を、強い緊張をはらんだ精神の注意力でとらえ、受容するのが即興の実態である。したがって、その創造性は意図の制御の埒外(らちがい)にあり、即興は無意識に深く根ざしている。[佐々木健一]

即興的作品

即興を旨としてつくりだされた作品のジャンルには、即興詩、即興曲、即興劇などがあり、いずれもインプロンプチュimpromptuとよばれる(improvisationが「予測抜きの活動」を意味するのに対して、この単語の語義は「準備されている」とか「目の前で」である)。このうちで即興劇とは、現実の俳優や演出家が登場人物となって自らの演劇論を展開するもので、モリエールの『ベルサイユ即興劇』L'Impromptu de Versailles(1663)が始まりと思われる。この即興劇の場合に典型的にみられるとおり、impromptuとは総じて即興的な味わいを盛り込んであらかじめ形成された作品であって、それ自体が即興であるわけではない。そして純粋な即興で作品をつくりあげることはほとんど不可能であり、即興詩を考えてみれば、与えられた主題を定型詩の枠にのっとって展開したのがその作品である。個人の創作においてそうであるならば、ジャズの即興演奏のように集団で行う即興の場合にはなおのこと、演奏者たちが共有する一連の約束事が不可欠である。[佐々木健一]

即興性

だが他方において、あらゆる再生芸術の実演に際して、たとえそれが既成の作品の実演であるとしても、そこに即興性を認めることができる。フランスの音楽美学者ブルレのいう即興的演奏がそれであり、楽譜を演奏するうえで、その曲をあたかも当の演奏者がそこでいま創造しているかのように、内発的に音化していくことを求めたものである。即興性とは現に進行している創造性にほかならない。そこで、創造性についての反省に立脚する現代芸術のなかには、計画的構成を重んずる立場と対立して、即興性を追求する有力な潮流があるわけである。[佐々木健一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① その場で起こる興味。座興。〔文明本節用集(室町中)〕
② 興に乗って、即座に詩や歌などを作ること。即座の口ずさみ。即吟・即詠など。また、音楽で、その場で考えた旋律を演奏すること。
※俳諧・其便(1694)「畦止亭におゐて即興 月下送児 月澄や狐こはがる児(ちご)の供」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内の即興の言及

【ジャズ】より


[モダン・ジャズの成熟]
 1950年代後半にいたり,それまで鳴りをひそめていたニューヨークの黒人ジャズが人気を盛り返した。グループ表現という点ではやや無秩序だったバップ・イディオムを,コンボ形式の中で修正し,しかもインプロビゼーションimprovisation(即興演奏,アドリブと同意)を主体としたマイルス・デービス,ソニー・ロリンズ(T.ロリンズ),アート・ブレーキーArt Blakey(1919‐90,本名Abdullah Ibn Buhaina),マックス・ローチら黒人によるモダン・ジャズは,〈ハード・バップhard bop〉と呼ばれ,その力強く直截な表現は,ウェスト・コーストの白人プレーヤーによる,近代音楽との融合に傾いた実験的なジャズを圧倒する勢いをみせた。このころからアフリカでは黒人指導者たちによる独立が相次ぎ,アメリカ国内にあっては白人・黒人の共学問題,バス・ボイコット運動,公民権獲得運動など黒人差別撤廃の動きが大きくなった。…

【即興演奏】より

…楽譜やメモによらずに即座に演奏し,生きた音楽を創造する行為をさす。インプロビゼーションimprovisationともいう。既存の音楽作品や既存のパターンに基づいて装飾を加える部分的な即興,与えられた主題に基づいて自由に装飾を加える発展的な即興,いかなる既存の楽曲や主題も用いないで新しい音楽を作りだす全体的な即興などに区分される。…

※「即興」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

オーバーシュート

感染症の爆発的な感染拡大を指す。語源は、「(目標を)通り越す」「(飛行機などが停止位置を)行き過ぎる」という意味の英語の動詞「overshoot」。2019年12月に発生した新型コロナウイルスに関して...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

即興の関連情報