トランス形(読み)トランスがた(その他表記)trans form

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トランス形」の意味・わかりやすい解説

トランス形
トランスがた
trans form

原子原子団または配位子の分子内における配置を示す用語。トランスはラテン語で「越えて」を意味する。シス形に対する用語。炭素-炭素二重結合は,結合軸のまわりの回転が行われないため,炭素に結合した原子または原子団の位置は固定される。四面体模型の考察によって二重結合の場合,各原子は同一平面にある。たとえば abC=Cab 型化合物では次の2種の幾何異性体が存在しうることが予想され,のちに実験によって証明された。この種の立体配置は炭素-炭素二重結合の場合に限らず,結合回転が行われない他の場合,たとえば炭素環式化合物の場合や,単結合で結ばれていても立体障害の影響を受けてその回転が妨げられている場合にも生じる。また炭素-炭素単結合が回転している場合でも時間的に,ある2個の原子 (図では塩素原子) が炭素-炭素単結合の軸に対して互いに 180゜の方向に配置している場合をトランス形といい,同一方向にある場合をシス形という。この場合は炭素-炭素単結合の回転のためトランス,シス以外にトランス形の結合を左または右へ 120゜回転することによって得られるゴーシュ形が知られている。一般にトランス形のほうがシス形より安定な場合が多い。錯化合物の場合は,配位子が隣り合わず,向い合っている立体配置をトランス形という。 (→幾何異性 , 立体異性 )

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