トレンテ・バリェステール(読み)とれんてばりぇすてーる(英語表記)Gonzalo Torrente Ballester

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

トレンテ・バリェステール
とれんてばりぇすてーる
Gonzalo Torrente Ballester
(1910―1999)

スペインの小説家、評論家。長編小説『ハビエル・マリーニョ』(1943)によって、内戦後のスペイン文壇にデビュー。その後、第二共和制末期のガリシア地方の村を舞台に、精神主義と物質主義を象徴する2人の村の有力者を中心に展開される長編三部作『喜びと影』〔『大旦那の帰郷』(1957)、『風の通る道』(1960)、『悲しき復活祭』(1962)〕を発表、現代スペイン小説界に確固たる地位を築いた。さらに、ガリシア地方の聖人伝説に立脚し、空想の村を舞台に、謎の人物J.B.をめぐる幻想味あふれる魅力的な文学世界を構築した大作『J.B.伝説とフーガ』(1972)は江湖の絶賛を博した。1977年に王立アカデミー会員に推挙され、1985年にはスペイン語圏のノーベル文学賞に擬せられるセルバンテス賞を受けた。その後も『黙示録断片』(1977)、『手折られたヒヤシンスの島』(1981)、『ダフニスと夢』(1982)の幻想的三部作をはじめ、『こころならずもフィロメノと呼ばれ』(1988。プラネタ文学賞)、『仰天王様年代記』(1990)、『素晴らしき島々』(1991)など旺盛(おうせい)な創作活動を続けた。文芸評論家としても『スペイン現代文学展望』(1949)などの優れた著作がある。

[東谷穎人]

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