ヌスラ戦線(読み)ヌスラセンセン

デジタル大辞泉 「ヌスラ戦線」の意味・読み・例文・類語

ヌスラ‐せんせん【ヌスラ戦線】

シリアレバノンで活動するイスラム教スンニ派の反政府武装組織。アルカイダ関連があるとして国連米国などがテロ組織に指定している。アル=ヌスラ戦線。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「ヌスラ戦線」の解説

ヌスラ戦線

国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派組織。アブムハンマド・ジャウラニ指導者が率いる。2012年前半からシリアで活動を活発化させ、北西部イドリブ県などを拠点にアサド政権軍などと攻防を続ける。米政府がテロ組織に指定し、幹部は国連の制裁対象。16年7月にアルカイダと決別し「シリア征服戦線」に改称。17年1月には他組織と合流し、新組織「シリア解放機構」の設立を宣言したが、米国などは評価を維持。過激派組織「イスラム国」(IS)とは協力関係にあったが、対立に転じた。(カイロ共同)

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

知恵蔵 「ヌスラ戦線」の解説

ヌスラ戦線

シリアで活動しているスンニ派イスラム過激組織。2012年1月、アラウィ派(シーア派系)のアサド政権打倒と厳格なシャリーア(イスラム法)に基づく支配を目指し、ムハンマド・アル・ゴラニ(または、ジャウラニ)を指導者に結成された。正式名称は「シャーム民衆のアル・ヌスラ戦線」。「シャーム」はシリア周辺地域を指し、「ヌスラ」は「支援」という意味。実動部隊は約1万人とみられ、主にシリア北部のアレッポ、イドリブ、首都ダマスカス周辺で活動している。
創設者のアル・ゴラニはシリア出身で、かつては国際テロ組織「イスラム国」(IS)の戦闘員だったと伝えられる。13年4月、ヌスラ戦線を傘下に組み入れようとしたISの最高指導者バグダディと対立し、アルカイダの最高指導者ザワヒリへの忠誠を宣言した。以後、ヌスラ戦線は事実上、アルカイダのシリア支部組織としてシリア内戦を中心に活動しており、国連安全保障理事会もアルカイダに関連するテロ組織として制裁リストに加えている。長期化しているシリア内戦は、これまで何度も停戦協定が結ばれているが、最近(16年2月)の米ロの合意による停戦協定では、「イスラム国」と共にヌスラ戦線は除外されており、反アサドで連携してきた穏健派の反体制組織「自由シリア軍」などとの関係も悪化していると伝えられる。
活動資金の大半は、支援者の寄付原油密輸、誘拐による身代金などとみられる。最近では、ヌスラ戦線に誘拐されたスペイン人ジャーナリスト3人が16年5月に解放されたが、身代金の支払いについては明らかにされず、スペイン政府はトルコとカタールが仲介に大きな役割を果たしたと発表している。

(大迫秀樹 フリー編集者/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉プラス 「ヌスラ戦線」の解説

ヌスラ戦線

《Jabhat al-Nusra》シリア、レバノンなどで主に活動するスンニ派イスラム過激組織。2012年、シリア政府の打倒とイスラム法に基づく支配体制の樹立を目標に掲げ結成を宣言。当初は「イラク・イスラム国(ISI)」の最高指導者バグダディらの影響下にあり、2012年12月にはISIの別称として米国FTOに指定されたが、2013年のISIによる「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」への改称宣言に際しては同組織への統合を拒み、「アルカイダ」の最高指導者ザワヒリへの忠誠を宣言している。2014年以降、ISILとの衝突が本格化。同年、米国ではFTO指定を改訂し、ISILとは別の組織としてヌスラ戦線をFTOに指定した。2016年7月にはアルカイダからの離脱を表明、「ファテフ・アル・シャーム戦線(JFS)」を経て2017年から「タハリール・アル・シャーム機構(HTS)」を結成。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android