ハーグ陸戦条約(読み)ハーグりくせんじょうやく

改訂新版 世界大百科事典 「ハーグ陸戦条約」の意味・わかりやすい解説

ハーグ陸戦条約 (ハーグりくせんじょうやく)

1899年ハーグ平和会議で採択され,1907年第2回ハーグ平和会議で改正された〈陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約〉。この条約は,締結国がその陸軍軍隊に対し,条約付属の〈陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則〉に適合するよう訓令を発することを要求している。同規則は,当時の戦争法規を法典化したもので,交戦資格俘虜,害敵手段の制限,間諜,軍使,降伏条約,休戦占領等に関する56ヵ条に及ぶ条文を含む。それらは,陸戦のみならず,戦争一般に妥当するものとみなされている。なお,この条約の前文には,〈一層完備シタル戦争法規ニ関スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ,締約国ハ,其ノ採用シタル条項ニ含マレサル場合ニ於テモ,人民及交戦者カ依然文明国ノ間ニ存立スル慣習,人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スル〉という有名なマルテンス条項が挿入されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のハーグ陸戦条約の言及

【国際法】より

… ところで,今世紀に入ると,規定内容が厳密でない,あるいは,法の存在の立証が難しい,などの慣習国際法の欠点を克服するための法典化の試みがなされるようになった。その初期の代表的なものとして,1899年および1907年にハーグで署名された〈陸戦の法規慣例に関する条約〉(ハーグ陸戦条約)がある。その後,慣習国際法の法典化の試みは,国際連盟や国際連合を通じて組織的に行われるようになった。…

【ハーグ平和会議】より

… 1899年第1回ハーグ平和会議には,ロシア皇帝の招請によりヨーロッパを中心に26ヵ国(日本を含む)が参加し,そこで採択された三つの条約と三つの宣言は,国際紛争平和的処理条約(国際紛争)を除き,すべて戦争法に関するものであった。すなわち,〈陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約〉(ハーグ陸戦条約ともいう)およびその付属規則,〈ジュネーブ条約ノ原則ヲ海戦ニ適用スル条約〉と,軽気球より投射物および爆発物を投下することの禁止宣言,窒息性・有毒性ガスの散布を唯一の目的とする投射物の使用禁止宣言,ダムダム弾使用禁止宣言である。この会議は軍備制限をも目的としたが,これについては当時の無差別戦争観(戦争)の下でいかなる合意もえられなかった。…

※「ハーグ陸戦条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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