知恵蔵 「バイトテロ」の解説
バイトテロ
バイトテロは、「アルバイトのテロ」を表す造語。2013年、高知県にある大手コンビニエンスストアの店舗で店員がアイスケースに入った姿や、東京都のそば店で従業員が食器洗浄機や冷蔵庫に寝そべる姿などが相次いでFacebookやTwitterに投稿され、これらの行為を表す言葉として、「バイトテロ」が使われるようになった。東京都のそば店のケースでは、不適切な投稿をきっかけに批判が相次ぎ、そば店は営業を停止、東京地方裁判所から破産宣告を受けた。
その後は、企業側が従業員教育の強化などの対策を取ったこともあり、不適切な投稿はやや減少したが、18年以降、再び目立つようになった。写真から動画での投稿が増え、投稿先も、FacebookやTwitterから、Instagramへと移っている。運営会社などが謝罪したケースには、次のようなものがある。18年12月から19年2月にかけて、カラオケ店の厨房と思われる場所で、店員のような人物がから揚げを床にすりつける様子を撮影した動画、回転ずしチェーンの店舗で、アルバイト男性2人がまな板の上で切った魚をごみ箱に捨て、再びまな板の上に戻す様子を撮影した動画、定食チェーンの店内で従業員が商品を口に含む、ズボンを脱ぐなどの行為を映した動画などである。
企業側の対応も厳しくなっている。前述のカラオケ店の運営会社は、警察に被害届を出した。大手定食チェーンのケースでは、運営会社が該当する従業員を退職処分としたほか、全国のほとんどの店舗を一斉休業し、従業員の再教育と店舗清掃を行った。不適切な投稿をした従業員に対し、企業側が法的措置を検討しているケースもある。
また、保険会社の中には、バイトテロが起こった場合、弁護士への相談費用や謝罪広告などトラブル対応にかかる費用を補償する保険を販売する会社も出てきた。
バイトテロが多発する背景には、生産年齢人口の減少による人手不足があると言われている。人手不足でアルバイトへの教育や監視が行き届かず、アルバイトも「ふざけているつもりだった」「仲間内で盛り上がると思ってやった」といった軽はずみな気持ちで動画を投稿するケースが見られる。
(南 文枝 ライター/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報