調理した飲食物をその店内で客に食べさせる店。旅行者を宿泊させる宿屋営業が成立し,そこで食事を提供するようになったのが,外食施設である飲食店の原形と思われる。ヨーロッパではすでに古代ギリシアにそれが見られるが,日本では室町後期までに一般化したようである。江戸時代に入って人口の都市集中化が進み,社寺参詣や物見遊山を目的とする旅が一般にも行われるようになると,飲食店はさまざまに分化,発展を遂げるようになった。江戸では明暦の大火(1657)後,急激に各種の飲食店が台頭する。市街復興のために集まってきた労働者を主たる対象として煮売屋が発生,その中からは手軽に酒とさかなを楽しむことのできる居酒屋が生まれてくる。社寺門前の茶店では浅草金竜山に奈良茶を食べさせる店が出現,それまで外食の経験をもたなかった江戸市民はもの珍しさから競ってそれを食べに行ったという。〈けんどん蕎麦(そば)切り〉〈けんどん屋〉などと呼ばれたそば屋やうどん屋もこのころから顔を見せる。以後約1世紀,田沼時代を迎えて江戸の飲食店は本格的な開花を見せる。まず,諸藩の留守居役や上層町人などを最大の顧客とした高級料亭が各所にでき,その中には中国風の卓袱(しつぽく)料理店などもあった。うなぎ屋,すし屋などは広く一般の歓迎するところでもあった。一部の開明派は獣肉食を愛好し,〈ももんじ屋〉と称される店はその人々の欲求にこたえた。幕末明治になって西ヨーロッパの影響下に洋食屋が生まれ,コーヒー店が現れてコーヒー飲用が普及するなどして,日本の飲食店は現在の姿をとるに至るのであるが,その細部については以下の諸項目を参照されたい。すなわち,日本については,〈居酒屋〉〈茶店〉〈水茶屋〉〈煮売屋〉〈飯屋〉〈料理店〉〈ももんじ屋〉〈喫茶店〉〈バー〉〈スナック〉および〈ウナギ〉〈すし〉〈ソバ〉〈てんぷら〉〈会席料理〉〈卓袱〉〈洋食〉,あるいは〈茶飯〉〈田楽〉〈汁粉〉など。また,いわゆる大衆食堂,ファミリーレストランなどは〈外食〉および〈飲食業〉に略述した。欧米などの飲食店については〈レストラン〉〈バー〉〈パブ〉〈カフェ〉〈喫茶店〉など。
執筆者:編集部
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