日本大百科全書(ニッポニカ) 「パルチバル」の意味・わかりやすい解説
パルチバル
ぱるちばる
Parzival
ドイツ中世盛期の宮廷詩人ウォルフラム・フォン・エッシェンバハの長編叙事詩。1200年ごろ~1210年ごろ成立。フランスのクレチアン・ド・トロアの『ペルスバルあるいは聖杯の物語』(1181以後)を基にして、主人公パルチバルが愚直な少年からアーサー王の円卓の騎士を経て聖杯王になるまでを描く。主人公の宗教的体験(罪の悔悟と神の恩寵(おんちょう)への覚醒(かくせい))を、円卓の騎士を代表する副主人公ガーワーンの世俗の体験(冒険と恋の遍歴)と対比させながら、パルチバルの聖杯獲得を世俗の騎士世界とキリスト教信仰の世界との調和の象徴として表現した。作品の構成は救済史を模し、作者独自の世界をつくっている。ワーグナーの楽劇『パルジファル』Parsifal(1882初演)はこれを素材としている。
[小栗友一]
『加倉井粛之・伊東泰治・馬場勝弥・小栗友一訳『パルチヴァール』(1974・郁文堂)』