3幕から成る,W.R.ワーグナー最後の楽劇。作曲者自身〈舞台神聖祝典劇〉と呼んでいる。台本は作曲者自身が1877年に完成,作曲は82年完成。同年7月,バイロイト祝祭劇場で初演。素材は13世紀初めのウォルフラム(エッシェンバハの)の叙事詩《パルチファル》その他に求められている。スペインの北部山地モンサルバートの城主で,聖杯と聖槍に奉仕するアムフォルタス王が,魔神クリングゾルのため聖槍を奪われ,傷を負わされたが,〈きよき愚か者〉パルジファルによって聖槍を取り返し傷もいやされ,パルジファルが聖金曜日にアムフォルタスの後継者となるまでの筋をもつ。
神秘的・宗教的色彩が濃いが,純粋にキリスト教の思想や典礼に従った劇ではなく,仏教思想やショーペンハウアーの哲学などに影響された表現もうかがわれる。ワーグナーはこの劇の神聖な性格のゆえに,他の一般の劇場での上演を嫌い,バイロイト祝祭劇場が上演を独占することを主張した。そのため彼の死後30年間,すなわち1913年まで他の劇場では,二つの例外を除いては,上演されなかった。
この,ワーグナー最後の楽劇は音楽的には特に新しいものは見られないが,老年の楽匠にふさわしい円熟した手法をもつ傑作である。題材に適応して,ゆるやかなテンポの神秘的な音楽が特徴である。ワーグナーが自己の思想を実現したバイロイト祝祭劇場が建てられてから後,作曲されたのがこの作品であり,この劇場の特殊な音響を生かすべく管弦楽手法が独特のやわらかさをもっている。しかし一方では,ポリフォニックな手法,不協和音,転調が大胆に効果的に用いられている。
執筆者:渡辺 護
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ワーグナー作曲の楽劇。中世の叙事詩に基づいて自ら台本をつくり、1882年に完成、同年バイロイト祝祭劇場初演。全三幕。舞台神聖祭典劇Bühnenweihfestspielと題されている。物語は中世スペインのモンサルバート城を舞台に展開する。十字架上のキリストの血を受けた聖杯を守る騎士団の王アムフォルタスは、妖女(ようじょ)クントリーの愛欲に迷って魔術師クリングゾルに重傷を負わされ、騎士団は没落の一途をたどるが、「清き愚者」パルジファルがさまざまな遍歴を経て「同情」を知り、老騎士グルネマンツに導かれてアムフォルタスとクントリー、そして騎士団を救済する。この神秘的な物語には最晩年のワーグナーの宗教観・世界観(キリスト教を題材としているが東洋思想の影響も強い)が如実に現れ、音楽も穏やかな外見にかかわらず『トリスタンとイゾルデ』以上に急進的なスタイルで書かれている。ワーグナーの死の前年に初演されたこの作品は、1913年まで同劇場以外での上演が禁止されていたほど神聖視されていた。日本初演は1967年(昭和42)二期会による。
[三宅幸夫]
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…この子孫がギルザイである。彼らの一派はインドに入ってデリーにハルジー朝(1290‐1320)を建てた。また1722年にはギルザイのホタキー族の族長ミール・ワイスの子ミール・マフムードMīr Mahmūd(1699‐1725)が,サファビー朝の都イスファハーンを占領した。…
…デリーに都を置き,ムスリムの君主(スルタン)が支配したため,この名称で呼ばれ,デリー・スルタン朝,デリー諸王朝とも総称される。普通,歴史的には奴隷王朝(1206‐90)に始まり,ハルジー朝(1290‐1320),トゥグルク朝(1320‐1413),サイイド朝(1414‐51),ローディー朝(1451‐1526)までの5王朝,320年間を指していうが,その語の意義上からは,スール朝(1538‐55),ムガル帝国(1526‐38,1555‐1858)までも含んでよい。 前述の5王朝についていえば,最後のローディー朝のみがアフガン系の君主で,他の4王朝の君主はすべてトルコ系である。…
※「パルジファル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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