日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビーレック」の意味・わかりやすい解説
ビーレック
びーれっく
Peter Viereck
(1916―2006)
アメリカの詩人、批評家。ニューヨーク生まれ。ハーバード大学その他で教え、1946年から翌年にかけてマサチューセッツ州のスミス・カレッジでロシア史の客員教授となり、のちには国務省の文化交流講師としてソ連へ行った(1961)。処女詩集『恐怖と作法』(1948)でピュリッツァー賞受賞(1949)。彼の詩は倫理性、形式性、明晰(めいせき)さを特徴としている。しかし、保守的な社会哲学、政治哲学に根ざした叙情に混じって、いたずらっぽい、またはふざけた陳述がある。『新詩選集』(1967)など多数の作品を著している。その後の『骨の髄は弓の射手』(1987)という長詩は、ときおりはっとさせる句を含むものの、彼の道化じみた特徴が首尾一貫していない憾(うら)みがある。この道化じみた面が災いとなって、詩の主流に受け入れられることがなかった。
[徳永暢三]