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道化 どうけclown

翻訳|clown

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

道化
どうけ
clown

道化役者の総称。原型は中世宗教劇の「悪玉」 (バイス) にまでさかのぼる。その後ルネサンス期を経て,宮廷道化師の職能を受継ぐフールとともに,イギリスエリザベス朝演劇では独自の発展をとげたほか,イタリアコメディア・デラルテに登場するパンタローネからフランスのアルルカン,ピエロなどに変貌した。代表的なエリザベス朝演劇の道化は,シェークスピア劇に多く見出され,まぬけな田舎者,あほうな召使などの無知な言動から生じるおかしさを基盤としており,知的な笑いを提供するフールとは対照的な役割を与えられていた。今日では,だぶだぶの衣服に円錐形の帽子をかぶり,おしろいを塗った顔に赤鼻のサーカスピエロとして残っている。

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デジタル大辞泉の解説

どう‐け〔ダウ‐〕【道化/道外】

人を笑わせるようなこっけいな身ぶりや言葉。また、それをする人。おどけ。「―を演じる」「―に徹する」
道化方(どうけがた)」の略。
道化師」の略。

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百科事典マイペディアの解説

道化【どうけ】

おどけた言動,また笑いを誘う振舞いをなし,しばしばそれを生業とする者。英語foolフランス語fou,ドイツ語Narrなどに相当する。欧語には〈愚者〉から〈道化師〉まで多様な語義があり,英語に限ってもbuffoonjesterjokerなどの類語がある。
→関連項目クラウン小人コメディア・デラルテリア王

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世界大百科事典 第2版の解説

どうけ【道化】

おどけた言語やしぐさで人を笑わせる者。歌舞伎の道化方(道外方)の略としても用いる。語源については,〈童戯〉〈戯気(たわけ)〉〈おどけ〉,斎藤道三(どうさん)の家来の〈道家某〉という名の転訛とするなど,諸説がある。英語のフールfool,フランス語のフーfou,ドイツ語のナルNarrは,愚者,まぬけ,職業的道化師など多様な意味内容をもつ。foolの語源はラテン語のフォリスfollis(〈ふいご〉の意)で,道化の無内容な言葉を〈風〉にたとえたと思われる。

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大辞林 第三版の解説

どうけ【道化】

人を笑わせるおかしなしぐさや言葉。また、それをする人。滑稽こつけい。おどけ。 「 -を演じる」 「 -に徹する」 「 -役」
「道化方」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

道化
どうけ

見る人を笑わせるようなおもしろく、おどけたことばおよび行動。そうしたおどけた言行をなす人間をいうこともあるし、さらにそうした言行を専門的職業とする道化師、道化役者をいうことも多い。歌舞伎(かぶき)の道化(道外)方(どうけがた)をさすこともある。「道化」ということばの起源自体は「童戯」「道戯」であろうという説、オドケやタワケからの転訛(てんか)であろうという説、それから戦国武将斎藤道三(どうさん)の家臣でおかしな風態をもって人の笑いを誘った道家某の名に由来するという説など諸説あって確かではない。ちなみに中国語では「滑稽(ホワチ)」がこれに相当する。英語では「フール」fool、フランス語では「フー」fou、ドイツ語では「ナル」Narrがこれにあたるが、愚行をなす馬鹿(ばか)者をいう一般的用法と滑稽(こっけい)な言行を専門的職業とする人をさす狭義の用法とが未分化であることはみな同じで、「フール」を愚か者ととるか道化役者ととるかで困る場合が多い。また宮廷や貴族のお抱え道化師「ジェスター」jesterや、サーカス、ボードビル、映画のスラプスティック・コメディに出てくる「クラウン」clownといった同系列の語とも用法上の区別はきわめてあいまいで、それらを総称する語として「フール」が使われたりもする。
 1人の個人を考えてみても、労働と合理性のみでは生きていけず、さまざまなジョークや愚行で息抜きを行いながら生命体としての平衡を保つように、一共同体も、労働と合理を核とする日常(ケ)に集合的な愚行を核とする非日常(ハレ)を一定期間対置させることによって平衡を保つが、そうした生命維持に必須(ひっす)の息抜き、ないし安全弁としての機能が徐々に制度化してくると、空間としての祝祭、そして役割としての道化が成立してくる。世界中の各種民俗的豊穣(ほうじょう)儀礼、中世教会の「愚者の饗宴(きょうえん)」やその末裔(まつえい)たるカーニバルといった祝祭の空間に道化が付き物なのも、そうした本質的なつながりのゆえである。
 祝祭が男女や階級といった日常的秩序の逆転を目ざし、いわゆる「逆(さか)さまの世界」の現出を目ざすように、役割としての道化も、たとえば両性具有的であるなど、徹底的な両義性を特徴とする。モトリー(だんだら服)とよばれるそのちぐはぐな衣装に道化の両義性は象徴される。日常世界の二項対立的な範疇(はんちゅう)の境界域に出没して、世界がどちらか一元的な価値観へと硬化するときには、抑圧された側の価値観の側から、そうした世界を嗤(わら)い攻撃する。社会への風刺者という形をとるわけだが、社会道徳は概して、人間が肉体をもつゆえの猥雑(わいざつ)さ(性、飲食、排泄(はいせつ))を抑圧する傾きがあるため、その批判者たる道化は逆に、人間の肉体性を誇張する。人間を精神性や合理性とひとまず切り離してただの肉体、風の通り抜けていく袋とみるような肉体観を道化は体現している。ちなみに「フール」のラテン語源フォリスfollisは、「袋」ないし「鞴(ふいご)」を意味するのである。
 あるいは、道化はもっと深い次元で人間生命力の抑圧された無意識の部分を表現しているということもできる。すなわちフロイト心理学でいうエスEs(本能的欲動。イドidともいう)ないし快楽原則を、ユング心理学でいうアーキタイプArchetype(元型)を表現する。文化が人間の肉体的猥雑さを抑圧し精神に優位を与えようとするとき、道化は抑圧された肉体性を担って表れ、文化の硬直化に対して、「補償」(ユング)として機能するのである。
 こうして道化は、日常的世界が抑圧するさまざまの要素(性、暴力、破壊、蕩尽(とうじん)、放恣(ほうし)、非合理)を表現し、そういう負(ふ)の役割を担うことで文化に平衡を保たせてきた。それは、硬直しつつある共同体が自らを活性化するために要請する、笑いを方法とした安全弁なのだということができるし、それで社会が賦活(ふかつ)するとすれば、道化には古代の民俗的豊穣儀礼にまで淵源(えんげん)するとおぼしい活性化機能があるのだということになる。さらに安全弁としての機能を果たした道化を追放することによって、社会がふたたび日常的世界に戻っていくのだとすれば、道化にはスケープゴートとしての役割があることにもなる。道化はその過剰な性的表現を介して世界に豊穣をもたらし、社会に平衡を保たせ、文化の更新に力を貸しながら、その役割を果たせばふたたび抑圧されねばならない。
 古代ローマでは農耕神サトゥルヌスを記念してサトゥルナリア祭が毎年12月に催された。そこでは偽王(モック・キングmock king)が選ばれ、1年の終わりに日常的規範からの逸脱と逆転をほしいままにする一時的支配権をゆだねられ、そして祭りの終わりには共同体の穢(けが)れを担って殺害されるスケープゴートとしての役割を果たした。中世・近世の道化師がロード・オブ・ミスルールlord of misruleすなわち「無礼講の王」とよばれて偽王としてふるまったのも、中世教会で日常的宗教慣習をことごとく逆転させて行われた僧侶(そうりょ)たちの「愚者の饗宴」で「阿呆(あほう)の司教」が果たした役割も、みなこの古代ローマの農耕儀礼における道化の機能に淵源する。
 しかし、中世には寛大に扱われていた「愚者の饗宴」は近代に入ると徐々に抑圧を被り、一種のギルドとしての愚行結社へと世俗化していったし、負の力を担う批判者としての道化は、16~17世紀イタリアの即興仮面劇コメディア・デラルテ、シェークスピアを筆頭とする17世紀初めのエリザベス朝演劇、ローマのミモス劇の流れをくむパントマイム、17世紀ドイツ民衆演劇であるハンスウルスト劇といった演劇のなかに、そのはけ口をみいだしていった。日本でも歌舞伎や狂言において「猿若(さるわか)」をはじめ多様な道化方が活躍し、滑稽なしぐさ、奔放な言語遊戯を介して道化役者たちは痛烈な社会風刺を行った。一方、近代絶対主義王権はその宮廷に宮廷道化(コート・ジェスター)を抱え、自己に向けられるはずの風刺をあらかじめ道化の毒舌に制度化しておくという方法をとった。
 19世紀になり労働と合理とが一方的に崇拝される時代、舞台道化たちはサーカスやパントマイムのクラウンやピエロへと、宮廷道化はブルジョア文化に寄食する文化人(ダンディ)へと退化した。ボードレール、ピカソといった芸術家たちが、自らの反社会性を「悲しきクラウン」の形象に託した。また、道化は演劇の分野のみならず、16世紀『愚神礼賛(らいさん)』のエラスムスや『ガルガンチュワ‐パンタグリュエル物語』のラブレーなどに始まる、人間の愚劣をおおらかに許容する道化文学にも結実し、それらの系譜も各時代に肉体性謳歌(おうか)の風刺の矢を放ち、それはサイレント映画のどたばたやベケットなどの不条理演劇のなかに、あるいはアンチ・ヒーローの活躍する小説のなかに華々しくよみがえっている。さらに1960年代には、近代の一元的価値観を疑問視する国際的な文化的批判運動のなかで、階級、男女などの範疇区分をやすやすと越える道化のトリックスターとしての両義性が、ありうべき知性のモデルとして大いに注目されたことは、まだ記憶に新しい。[高山 宏]
『M・バフチーン著、川端香男里訳『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』(1973・せりか書房) ▽山口昌男著『道化の民俗学』(1975・新潮社/1985・筑摩書房) ▽E・ウェルズフォード著、内藤健二訳『道化』(1979・晶文社) ▽W・ウィルフォード著、高山宏訳『道化と笏杖』(1983・晶文社) ▽B・バブコック編、岩崎宗治・井上兼行訳『さかさまの世界』(1984・岩波書店) ▽高橋康也著『道化の文学』(中公新書)』

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世界大百科事典内の道化の言及

【間狂言】より

…歌舞伎踊や浄瑠璃操り,幸若舞放下(ほうか),蜘(くも)舞などの諸芸能の間でも,それぞれ間狂言がはさまれ,物真似(ものまね)狂言,歌謡,軽業,少年の歌舞などが演じられた。なかでも一番多く演じられたものが物真似狂言であり,演者は歌舞伎の座に主に所属する狂言方,後に明暦・万治頃から道化と呼ばれた人たちである。三国(みくに)彦作,けんさい,奴作兵衛(やつこさくひようえ),坂東又九郎らは初期の道化として名高い。…

【アルレッキーノ】より

…コメディア・デラルテの中で下僕・従者として登場する代表的な道化役の一人。中世フランスの説話に現れるいたずら悪魔エルルカンHerlequin,エルカンHellequinがその語源であるといわれている。…

【嗚呼∥烏滸】より

…古くはヲコ,ウコとも。単純にいえば,おろか,愚鈍の意味だが,人を笑わせようとするような行為や,常軌を逸した行為などをもさす,多義的な語で,日本における道化的精神をさぐるのにきわめて重要な語といえる。語源はヲカシと同根かともされるが未詳。…

【クラウン】より

…〈土くれ〉〈田舎者〉を意味する英語のclodを語源とする説が有力だが,定説とはいえない。広義の道化foolと区別して用いられる場合には,舞台や見世物の道化役をさす。その祖先は古代ギリシア・ローマの喜劇役者,16世紀から18世紀にかけてヨーロッパを席巻したイタリアのコメディア・デラルテの道化たち(〈ザンニ〉と総称され,その一人ペドロリーノがピエロに発展した),シェークスピアの道化などに求められよう。…

【サーカス】より

…アメリカではサーカス学校のほかに,サーカスの博物館,図書館,サーカス・ファンの連合組織があり,イリノイ州立大学ではサーカスの技術講座も設けられている。
【サーカスの演目】
 サーカス研究家のブーイサックPaul Bouissacによれば,サーカスの基本は,アクロバット,道化(クラウン)芸,調教動物芸で構成され,さらに音楽や照明効果をともない,〈サーカス芸というものは,ハプニングの自由な連続体などではなく,綿密に計画された型どおりの所作(アクション)を一つのパターンにそって上演するものである〉という。また研究家のヒッピスリー・コックスはサーカスの演出を分類して,まず序曲についで大パレード,馬上曲芸,力男,動物芸,馬術,冒険技,休憩,檻(おり)入りの猛獣,空中ぶらんこ,馬のダンス,奇術,アクロバット,クラウンの入場,フィナーレとしている。…

【チャリ】より

…関西の方言で,道化(どうけ)たこと,あるいは道化者を意味する。また人形浄瑠璃や歌舞伎の道化役や滑稽な場面(チャリ場)をいう。…

【人形劇】より

… 俳優でなく人形が劇を演じるということは,第1に人物のタイプ(役柄)が固定し,第2に操作術により非現実的なものを現実化させうるという特色を示すことになる。その結果,人形劇にストーリーがつくようになった15世紀ころには,茶番劇で道化人形が主人公になり,ウイットと風刺のきく芝居があらわれた。17世紀になると,ヨーロッパでは人形劇にパトロンがつくようになり,道化人形が劇の重要なパートを占めるようになった。…

【もどき】より

…擬,抵牾,牴牾などと書く。芸能では主役のまねをしたり,からかったりする道化の性格をもつ役や曲をいう。たとえば御神楽(みかぐら)の人長(にんぢよう)と才男(さいのお),能の《》と《三番叟》を,神ともどきの関係としてみることができるし,舞楽の《二ノ舞》は,《安摩(あま)》の答舞の形をとって《安摩》をまねて舞われるが,これは《安摩》に対するもどきである。…

【やじ(弥次∥野次)】より

…野党やマスコミの存在機能の一端も,弥次を許容する体制や弥次の文化を構成することにある。言語による笑いの仕掛人たる道化jester foolの存在形態や役割機能は,政治文化の成熟度の一目安となろう。【坂本 孝治郎】。…

※「道化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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