改訂新版 世界大百科事典 「フッ(弗)化硫黄」の意味・わかりやすい解説
フッ(弗)化硫黄 (ふっかいおう)
sulfur fluoride
フッ素と硫黄の化合物で,化学式S2F2,SF4,SF6,S2F10の4種が知られている。
二フッ化二硫黄
化学式S2F2。一フッ化硫黄ともいう。真空中でフッ化銀AgFと過剰の硫黄を加熱して反応させると得られる。安定で収量の多いのが,揮発性のF2S=Sであり,融点-133℃,沸点-10.6℃,無色の気体。ほかにF-S-S-Fの構造をもつ異性体も生ずる。
四フッ化硫黄
化学式SF4。アセトニトリル中でSCl2とNaFを反応させると得られる。融点-121℃,沸点-40℃,無色気体。きわめて反応性に富み,-C=O基,-P=O基,-COOH基,および-PO(O)H基をそれぞれ-CF2,-PF2,-CF3,-PF3に変換する。また水とは瞬間的に反応して分解しSO2とHFを与える。
六フッ化硫黄
化学式SF6。硫黄とフッ素を加熱しながら直接反応させて得られる。二酸化硫黄とフッ素を加熱しても生成する。融点-50.8℃(加圧下),昇華温度-63.5℃の無色気体。硫黄を中心とする八面体形分子。熱的にきわめて安定であり,化学的にも不活性で絶縁耐圧が高いので高圧電気系の気体絶縁体として用いられる。
十フッ化二硫黄
化学式S2F10。次式に示す光化学反応によって得られる。融点-92℃,沸点約29℃の揮発性液体。
2SF5Cl+H2⇄S2F10+2HCl
きわめて毒性が強い。
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報