光化学反応(読み)コウカガクハンノウ(その他表記)photochemical reaction

デジタル大辞泉 「光化学反応」の意味・読み・例文・類語

こうかがく‐はんのう〔クワウクワガクハンオウ〕【光化学反応】

光の作用によって起こる化学反応。物質に光が当たって、活性分子遊離基を生じ、反応が進むことが多い。光分解光合成光重合などの反応がある。

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精選版 日本国語大辞典 「光化学反応」の意味・読み・例文・類語

こうかがく‐はんのうクヮウクヮガクハンオウ【光化学反応】

  1. 〘 名詞 〙 光のエネルギーによって起こる化学反応の総称。光の吸収によって分子が励起し、活性化した分子や基が生じて反応が進行する。光分解、光合成、光重合、光異性化などがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「光化学反応」の意味・わかりやすい解説

光化学反応 (ひかりかがくはんのう)
photochemical reaction

物質による光の吸収の結果ひき起こされる化学反応。〈こうかがくはんのう〉ともいう。物質が光を吸収してできた励起種が直接的にひき起こす諸過程を光化学前期過程といい,これにひき続いて起こる過程を光化学後続過程というが,光化学反応はどちらの過程でも起こる。光化学前期過程で起こる化学反応には,(1)光分解,(2)光異性化,(3)光励起分子と他の分子との衝突による反応などがある。(1)の光分解には,直接光分解(たとえばヨウ化水素の260nm領域における光分解で,10⁻13秒以内に分解する)と前期解離とがある。前期解離は,分子が結合性の電子状態に励起されたのちに,反結合性の状態に移って解離するもので,現象的には,光化学後続過程に属する。次に(2)の光異性化は,光励起した分子がひき起こす原子配列の変化であり,シス-トランス幾何異性化,互変異性化などがある。光異性化は,加熱などによってひき起こされる熱異性化とは大きく異なった異性体をしばしば与える。このような違いは,異なった電子状態にある分子では分子内の原子間の相互作用が基底状態のそれとは大きく異なり,まったく異なった分子のように振る舞うからであると考えられている。たとえば,温度,圧力,溶媒などの異なった条件下で進むベンゼンC6H6の熱反応では,ベンゼンの骨格は変わらないで,炭素に結合している水素原子が別の置換基と交換される置換反応大部分である。ところが,478kJ/molのエネルギーに相当する2500nm付近の光を照射すると,加熱だけの熱異性化によっては決して合成できない,不安定なフルベンフルバレンに異性化する。

このように,光化学反応を用いてきわめて不安定なひずみの大きな分子を合成することがしばしば行われている。(3)の光励起した化学種の起こす反応では,水銀原子による光化学増感反応が有名である。光化学反応過程と反応に至らないその他の過程(たとえば,発光,他の分子との衝突などによって励起エネルギーを失う失活,電子を放出する光イオン化,分子内で他の電子状態に移る項間交差など)とが競合するので,反応の量子収量は1より小さいことがある。

 光化学後続過程に属する反応は,(1)再結合反応(光分解によって生成した分解片が再び結合して元の分子にもどる),(2)化学反応(光分解や光イオン化によって生成した遊離基やイオンが他の分子と反応する),また,失活によって他の分子に移ったエネルギーを用いて反応を起こす葉緑体における光合成(こうごうせい)などがある。光分解や光イオン化によって生成した遊離基やイオンは,高い振動エネルギー並進運動のエネルギーをもっていることがあり,熱的に進む反応では起こらない反応を起こすことがある。
光化学 →光化学増感
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「光化学反応」の意味・わかりやすい解説

光化学反応
こうかがくはんのう
photochemical reactions

可視光および紫外線照射により引き起こされる化学反応の総称。光の吸収により分子内の電子がエネルギーの高い状態に励起されておこる化学反応を意味し、電子のエネルギーが最低の基底状態の熱反応とは初期過程において異なる。

 光化学反応の特徴としては、出発系より熱力学的に不安定な生成系、たとえば、ひずみ化合物、小環状化合物を合成することができる。また遊離基、カルベンナイトレンなど反応活性種を低温で生成するのにも適する。

 光化学反応は直接光照射、または光増感反応によっておこるが、最近、光を用いない光化学反応も知られるようになった。ホタルの発光の研究などがそれで、たとえばジオキサンの熱分解によって光励起状態のカルボニル化合物が生成され発光が観察される。

 有機化合物の光化学反応は、発色団の種類によって分類すると便利である。アルケン芳香族化合物、カルボニル化合物、アゾおよびイミノ化合物、ニトロおよびニトロソ化合物は光照射によって発色団特有の光反応を示す。たとえば、アルケン、芳香族化合物はπ(パイ)結合から、またカルボニル化合物やアゾ化合物は孤立電子対から励起され、特有な光反応を示す。また、光によりおこる反応の型によって分類することもできる。たとえば、光イオン化反応、光分解反応、光異性化反応、光置換反応、光付加および環化反応、光二量化反応および重合反応、光転位反応、光酸化および光還元反応などがあげられる。

 光化学反応の特色を生かす応用研究は、数多く知られており、たとえば銀塩および非銀塩写真、感光性樹脂、情報記録、紫外線吸収剤と酸化防止剤、蛍光増白剤と有色蛍光剤など工業的応用は広範である。

[向井利夫]

『徳丸克己編『共立ライブラリー17 光化学の利用』(1978・共立出版)』『長倉三郎編『岩波講座 現代化学12 光と分子』(1980・岩波書店)』『安藤亘著『新しい有機合成反応 有機合成における光化学反応――オレフィン,ケトンを中心として』(1983・三共出版)』


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化学辞典 第2版 「光化学反応」の解説

光化学反応
コウカガクハンノウ
photochemical reaction

光の吸収によって起こる化学反応の総称.一般の分子が化学変化に必要とされる以上のエネルギーの光を吸収すると,励起分子(光励起),遊離基(前期解離,光解離)やイオン(光イオン化)などが発生する.このうち,発生した励起分子は分解,異性化,発光,無放射遷移,ほかの分子へのエネルギー移動,失活,付加などの過程により励起エネルギーを失う.励起分子や遊離基などを反応中間体として,光分解光異性化光重合光還元光酸化などの反応が起こる.分子や原子が光を吸収して中間体を生成する過程と,生成した中間体が引き続いて各種の反応をする過程とに大別できる.これらをそれぞれ光化学一次過程(初期過程)および二次過程という.このうち,一次過程は光化学特有な過程であるが,二次過程は必ずしも光化学特有な過程ではない.多くの有機物や無機物は可視領域の光に対して安定である.可視領域の光を吸収して起こる反応は,おもに生物体でみられる(たとえば,光合成).紫外領域の光(400 nm 以下)は多くの物質に吸収され,光のエネルギーも十分に大きいため,各種の光化学反応を引き起こす.さらに,短波長になると光イオン化なども起こりやすくなる.

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百科事典マイペディア 「光化学反応」の意味・わかりやすい解説

光化学反応【ひかりかがくはんのう】

〈こうかがくはんのう〉とも。光の作用によって起こる化学反応。普通の反応と同じく,分解,合成,重合,異性化などの反応がある。多くの場合反応物質に光が当たることによって活性分子,遊離原子または遊離基などを生じ,これによって一連の反応が進むのであって,連鎖反応などとなることも多い。また最初に光を吸収する物質が反応物質自身である場合を非増感反応といい,最初の物質への光の吸収が引き金となって他の物質が化学反応を起こす場合を光増感反応という。
→関連項目光化学

光化学反応【こうかがくはんのう】

光(ひかり)化学反応

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栄養・生化学辞典 「光化学反応」の解説

光化学反応

 光を吸収した物質が起こす化学反応.

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