改訂新版 世界大百科事典 「ペトルスロンバルドゥス」の意味・わかりやすい解説
ペトルス・ロンバルドゥス
Petrus Lombardus
生没年:1095ころ-1160
イタリアの神学者,聖書学者,《命題論集》の著者。ノバラで生まれ,ボローニャ,ランス,パリの学校で勉学の後,ノートル・ダム大聖堂付属学校で教え,神学者として名声を博する。1159年パリ司教に任命され,その翌年没。聖書学者としてのロンバルドゥスはラオンのアンセルムス,ギルベルトゥス・ポレタヌスによる聖書釈義の仕事を補足しており,その注釈書は教科書として広く用いられた。さらに聖書釈義の仕事と並行して,キリスト教の教義の全体を聖書および教父,教会の権威ある学者たちの著作にもとづいて簡潔に叙述することを企て,《命題論集》4巻を完成した。この著作は,神学の研究がたんに聖書の解説・釈義ではなく,教義についての思弁的議論を通じて行われはじめた当時の学問的状況を反映すると同時に,その傾向を推進する役割を果たした。アレクサンデル・ハレンシスがパリ大学で神学講義の教科書としてこの著作を使用して以来,17世紀に入ってトマス・アクイナスの《神学大全》に席を譲るまで,ヨーロッパの多くの大学で神学教科書として用いられた。
執筆者:稲垣 良典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報