日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイクロ波用ダイオード」の意味・わかりやすい解説
マイクロ波用ダイオード
まいくろはようだいおーど
microwave diode
電波の波長が30センチメートル以下のマイクロ波領域(1ギガヘルツ以上)で使用される2端子の非線形半導体素子の総称。波長が1センチメートル以下(30ギガヘルツ以上)に用いるミリ波ダイオードと区別してよぶ場合が多い。検波、周波数混合(ミキサ)、発振、周波数逓倍(ていばい)、パラメトリック増幅などに用いられる。半導体材料には周波数の比較的低い領域では耐圧の高いn型シリコンが使用できるが、ミリ波に近づくと電波への追従が困難になり、電子が動きやすいヒ化ガリウム(GaAs)が有利となる。
検波用ダイオードは十分広帯域で信頼性の高いショットキーダイオードが用いられるが、素材にはn型シリコン(~200ギガヘルツ)またはGaAs(~3000ギガヘルツ)が使用される。
マイクロ波を直接増幅するのは困難なので、まずは検波して直流信号に直してから増幅するという方法をとる。この場合、半導体ダイオードはミキサと局部発振器として使用される。ミキサには、低雑音が要求されるために、pinダイオードまたはショットキーダイオードを用いる。発振器用のダイオードには負性抵抗をもつ2端子素子インパット(IMPact Avalanche Transit Time)ダイオードがあり、30ギガヘルツでも100ミリワットが得られることから広く使われている。
周波数逓倍とパラメトリック増幅には、接合容量がマイクロ波電圧に応じて変化するバラクターダイオードが使用される。
[岩田倫典]