負性抵抗(読み)ふせいていこう(英語表記)negative resistance

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「負性抵抗」の意味・わかりやすい解説

負性抵抗
ふせいていこう
negative resistance

機械的または電気的抵抗が負の値をとる場合をいう。通常の正の抵抗はエネルギーを消散する。たとえば,水平な雪の上を滑るスキーは雪との摩擦抵抗のために運動エネルギーが次第に失われて静止する。失われた運動エネルギーは熱エネルギーに変換されて雪を溶かす。ニクロム線などの抵抗体に電流を流すと,電力が消費されてそのかわりに熱が発生する。ところが,負性抵抗を示すものに電流を通じると,かえって電力が発生し,外部回路に電力が供給される。熱力学法則によれば,いかなるエネルギーも無から生じることはないので,発生したエネルギーに見合うだけのエネルギーは他の別の形で負性抵抗に供給されているはずである。負性抵抗の一例としてエサキダイオードがある。エサキダイオードは,特性曲線からわかるように,電圧を決めると電流値が一義的に定まるが,電流を決めても電圧には3つの可能な値が存在するので一義的に定まらない。こういう型の負性抵抗を電圧制御型負性抵抗と名づける。これに対して,電流を決めると電圧が一義的に定まるものを電流制御型負性抵抗という。アーク放電ダブルベース・ダイオード,SCR,サイリスタによる負性抵抗はこの型に属する。真空管トランジスタなどの増幅素子正帰還を施しても負性抵抗をつくることができる。

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改訂新版 世界大百科事典 「負性抵抗」の意味・わかりやすい解説

負性抵抗 (ふせいていこう)
negative resistance

電子回路に用いられるふつうの抵抗は,それを流れる電流が増加すると,抵抗間に現れる電圧はそれに比例して増大する。それに対し,電流-電圧特性のある区間で電流を増加させたとき電圧が減少する現象を示すもの(電流制御型),あるいは電圧を増加させたとき電流が減少する現象を示すもの(電圧制御型)がある(図)。このような現象を負性抵抗といい,負性抵抗を示す素子を負性抵抗素子という。前者の型を示すものには,PNPNダイオードが,後者の型を示すものには,トンネルダイオードガンダイオードなどがある。発振など能動的な動作をさせることができる。
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世界大百科事典(旧版)内の負性抵抗の言及

【自励振動】より

…したがって,この中間に安定なリミットサイクルが存在することになる。 このような負の係数をつくるものは一般に負性抵抗と呼ばれる。自励振動が発生するためには上の例のように負性抵抗的要素によってエネルギーが系に入ることが必要であるが,機械系では摩擦抵抗など,電気系では半導体素子など,また化学系では自己触媒型反応などによって実現されている場合が多い。…

※「負性抵抗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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