金属と半導体の接触面に生ずる整流作用を利用するダイオード。古くから使われている亜酸化銅整流器、セレン整流器、鉱石検波器なども同種の整流作用を利用している。金属が半導体に接触すると、室温においても金属から半導体に向かって熱電子放出があり、これによりエネルギー障壁ができる。また、半導体側からは拡散によって金属に向かって電子が移動し、電位差が半導体内に生ずる。したがって、半導体側を負にした順方向では、半導体中の電子が金属側に流れるが、逆方向では、熱電子放出による電子がわずかに金属側から半導体側に流れるだけとなり、整流作用が生じる。この働きは、1938年ショットキーWalter Hans Schottky(1886―1976)が理論づけたもので、ショットキー効果といわれ、この働きを利用したことからショットキーダイオードとよばれるようになった。
電力用の大面積ダイオードでは、順方向電圧0.5ボルト程度で数十アンペアの電流が流せるが、逆耐電圧は30ボルト程度と低い。順方向電流は半導体から金属への電子の流れだけとなり、半導体への少数キャリア(この場合は正孔)の注入はないので、少数キャリアの蓄積がなく、ダイオードをスイッチしたときの応答速度は速い。このように順方向電圧損失が少なく応答速度が速いので、集積回路などのスイッチ特性向上に用いられるほか、超高周波受信機などにも使われている。また、大電力用としては、低電圧大電流の整流や200キロヘルツ程度までの高周波交流の整流に使われている。ダイオードに使う半導体は無線電話中継装置やテレビ受像機などでガリウムヒ素(ヒ化ガリウム)を使うこともあるが、電力用にはn形シリコンが多く使われる。このときの金属はアルミニウムまたはクロムを使うことが多い。
[右高正俊]
金属と半導体との接触による非線形の電圧・電流特性を示す2端子素子。非線形の電圧・電流特性は接触部の半導体表面に生ずる電位障壁の存在によるが,W.ショットキーがこの電位障壁の形成を予測したので,その名を冠している。ショットキーダイオードでは半導体の多数キャリアが支配的に流れるので,少数キャリアの蓄積効果がほとんどなく,p-n接合ダイオードよりも高速,高周波の信号を整流することができ,バイポーラトランジスターの飽和を防いだり,超高周波信号の検波,負抵抗デバイスの製造などに用いられる。ショットキーダイオードにおける電流制限機構は多くの場合,半導体と金属との界面でのキャリアの熱放出による。
執筆者:菅野 卓雄
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