翻訳|detection
本来は電波その他の波動性のエネルギーが存在していることを検出することを意味するが、現在では復調と同じ意味に使われている。すなわち、伝送しようとする信号に対応した電流で変調された高周波電流から、受信側で元の信号電流の波形と相似した電流を取り出すことをいう。信号電流で変調された高周波を被変調波というが、電波に限定して述べるならば、電波の型式によって振幅変調(AM)、周波数変調(FM)および位相変調(PM)の3種類に分類される。このうち、検波という語は振幅変調波から元の変調信号を検出することに限って使用される傾向があり、周波数変調、位相変調においては復調の語が用いられることが多い。振幅変調された電波は、搬送波といって信号波電流よりかなり高い周波数の電波の振幅を、信号波電流の強弱に対応して変化させたものであり、検波によって再生したいものは、その振幅の変化の包絡線である。
[石島 巖]
振幅変調を行う過程において、信号波と搬送波とは単純に加算されたものではなく、非直線特性(入力電圧の直線的な変化に対して出力電流が二次関数的に変化する特性)の素子を通して加算されている。振幅変調において搬送波の振幅が変化しているようにみえるのは、振幅がすこしも変化していない搬送波を中心として、その上下に信号の周波数だけ離れて二つの側波帯という電波が生じているからである。検波の対象となる信号は上下の側波帯のなかに搬送波との周波数差と振幅の変化という形で存在しているので、単にフィルターのような回路だけでは搬送波と信号波との分離はできない。そのため、振幅変調波を検波する際も非直線素子を通して整流し、高周波成分を濾波(ろは)して包絡線を検出するのである。
1940年代中ごろから、レーダーのようなマイクロ波を使用する特殊装置には、検波素子としてゲルマニウムのダイオード(diodeは二極真空管を表す語であるが、同等の性能をもつ二極の半導体整流素子もダイオードとよぶ)を組み込んだ特殊なマイクロ波用検波器が使用され始めた。一般のラジオ受信機などの検波器としてダイオードが使用されるようになったのは、ラジオそのものがトランジスタ化されるようになった1960年以降である。非直線素子として、1960年ごろまでは二極真空管が用いられたが、それ以後は主としてゲルマニウムやシリコンの整流素子が使用されている。検波用のダイオードは通常、入力電圧が0ボルトから0.5ボルトの範囲で、二次曲線で近似できるので二乗検波とよばれ、高感度の検波器として使用される。入力電圧がこれよりはるかに高い場合には、ダイオードの非直線特性は折れ線で近似できるので、この場合は直線検波となり、高感度ではないがひずみが少なく、送信機の変調特性の測定のような用途に使用される。
[石島 巖]
周波数変調波を復調するには、まず周波数の変化を、それに対応した電圧の変化に変換して振幅変調波と近似した形にした後、それをダイオードで、振幅変調と同様な方法で検波すればよい。周波数の変化を電圧の変化に変換する素子としては、共振回路の周波数特性曲線の傾斜部を用いる簡単なものや、二つの共振回路のコイルを逆向きに接続して直線性を改善した二同調型、FMラジオに使用される単同調のフォスター・シーリー型などの周波数弁別器discriminatorがある。回路素子本来の機能ではないが、自動周波数制御(AFC)回路内に組み込まれている電圧制御発振器(VCO)という素子の周波数制御電圧の波形が周波数の変化によく対応しているところから、性能のよい周波数弁別器として多く利用されている。
[石島 巖]
位相変調は送信すべきデジタル信号電圧によって、搬送波の位相に変化を与えることにより信号を伝送する変調方式である。位相変調波の復調には、伝送されてくる位相変調波と周波数が同じで、刻々変化する位相のいずれかと同じ単一の位相をもつ周波数(参照周波数)が必要である。この参照周波数は現に受信中の位相変調の電波をもとに受信機の中で生成しなければならない。その生成方法は、かなりむずかしいけれども、たとえば位相が180度変移する2相PSK(PSK=phase shift keyingの略。位相偏移変調)の場合には、まずその受信周波数を2逓倍(ていばい)する(入力周波数を2倍に変換して出力する)ことによって一つの位相とし、次にそれを2分周する(周波数を半分にする)ことにより、一つの位相をもつ元と同じ周波数に再生するのである。こうして再生された参照周波数と受信した電波の振幅を加算すれば、逆位相になる場合の振幅が0、同位相となる場合の振幅が2となるから、一種の振幅変調波に変換されたことになる。しかるのちにダイオード検波器で振幅の変化を検出するようにすれば位相変調波が0か1の形で復調されたことになるので、このような装置を位相弁別器という。初期においては、位相変調は主としてデジタル符号パルスの変調復調に使用された。しかし、21世紀に入った現在では、衛星通信を含む電波のマイクロ波化や光回線などの使用により、ブロードバンド化が可能になったので、デジタル符号化されたアナログ信号という形式の信号が、位相変調でも容易に取り扱えるようになっている。位相変調も多相化したn相位相変調とか、振幅変調と合成させた、直交振幅変調なども現れているので、位相弁別器も多重化・高周波化に適応して、位相弁別器からアナログ信号が出力されることも普通に行われるようになった。
[石島 巖]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…狭義には,電気通信において,送られてきた搬送波のパラメーター(振幅,周波数,位相など)の変化を検出し,変調信号を復元することである。この場合,検波detectionともいう。ここでは搬送波を正弦波として復調回路を説明する。…
※「検波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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