マクミラン報告(読み)マクミランほうこく(英語表記)Macmillan Report

改訂新版 世界大百科事典 「マクミラン報告」の意味・わかりやすい解説

マクミラン報告 (マクミランほうこく)
Macmillan Report

旧平価による金本位制復帰(1925)とその後の世界恐慌によって深刻な打撃を受けていたイギリス経済を再建するため,1929年11月に第2次労働党内閣はスコットランド人の判事マクミランH.P.Macmillanを委員長とし,有力な学識経験者から成る諮問委員会を任命した。この委員会の正式名称は〈金融および産業に関する委員会Committee on Finance and Industry〉であるが,委員長の名にちなんで〈マクミラン委員会〉と呼ばれる。委員会の最も活動的で最も影響力のあるメンバーがJ.M.ケインズであった。31年7月に提出された委員会報告すなわちマクミラン報告では,賃金俸給の切下げは不況打開策として無力であること,固定為替相場制度のもとでの金融政策の有効性は限られたものにすぎないこと,公共事業を中心とする直接的な有効需要政策が望ましいこと,などが主張されているが,これらの主張のほとんどは,その後ケインズによって体系づけられた,いわゆるケインズ理論の中核となったものである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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