ミオグロビン尿症

内科学 第10版 「ミオグロビン尿症」の解説

ミオグロビン尿症(筋痙攣とミオグロビン尿症)

(2)ミオグロビン尿症(myoglobinuria)
概念・定義
 重度の筋障害があると,罹患筋の脱力・筋痛に加え,褐色(コーラ様)尿が出現する.筋由来のミオグロビンが尿中に排泄されるためでミオグロビン尿という.全身の筋の1~5%以上が障害されるとミオグロビン尿になるとされ,血中のミオグロビン濃度は10~15 mg/dL以上,クレアチニンキナーゼ濃度は正常値の数百~数万倍に及ぶ.ミオグロビン尿症は,重度の筋障害を示す点で横紋筋融解症(rhabdomyolysis)と同義語である.ただし筋症状だけでなく急性腎不全が続発し得ることに注意が必要である.
分類
 原因別に分類すると,外傷や感染などの直接的障害と遺伝性や電解質異常などに続発する場合に大別される(表15-21-11).頻度が高い原因は外傷,熱中症,てんかん重積,脂質異常症薬などである.
症状
 障害筋に脱力・筋痛・筋腫脹を認める.筋から遊出したミオグロビンは腎尿細管を障害し,急性腎不全が続発する.筋由来のカリウム遊出により高カリウム血症から致死的不整脈を生じることもある.
治療・予防
 原疾患の治療と平行して補液とループ利尿薬を投与し,腎不全発症を予防する.腎不全や高カリウム血症の悪化があれば血液透析を考慮する.[川並 透・加藤丈夫]
■文献
有村公良,渡邉 修:免疫介在性ニューロミオトニア(Isaacs症候群).脳神経,62: 401-410,2010.
Bosch X, Poch E, et al: Rhabdomyolysis and acute kidney injury. N Eng J Med, 361: 62-72, 2009.
Ropper AH, Samuels MA: Disorders of muscle characterized by cramp, spasm, pain and localized masses. In: Adams and Victor’s Principles of Neurology. 9th ed, pp1434-1443, McGraw-Hill, New York, 2009.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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