(1)循環器病ガイドシリーズ.不整脈薬物治療に関するガイドライン (2009年改訂版). http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
(2)The Antiarrhythmics Versus Implantable Defibrillators(AVID) Investigators. A comparison of antiarrhythmic-drugtherapy with implantable defibrillators in patients resuscitatedfrom near-fatal ventricular arrhythmias. N Engl J Med. 1997; 337: 1576-1583.
(3)循環器病ガイドシリーズ.不整脈の非薬物治療ガイドライン (2011年改訂版). http://web.pref.hyogo.jp/hw19/documents/guideline.pdf
(4)McAlister FA, Ezekowitz J, Hooton N, et al. Cardiac resynchronization therapy for patients with left ventricular systolic dysfunction: A systemic review. JAMA. 2007; 297:2502-2514.
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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
心臓は規則正しいリズムで収縮しています。これは図18のように
不整脈とは、このリズムが乱れたり、リズムが一定でもそのリズムが非常に速かったり遅かったりする場合や、リズムが正常でも刺激伝導系に異常があって、心電図の波形に変化がみられる場合も含まれます。学校検診などで偶然発見される場合は、基礎疾患がない場合がほとんどです。
不整脈には、以下のような心配のないものと要注意のものがあります。
●心配のない不整脈
①
洞房結節は心臓の電気的刺激を最初に出す場所ですが、それ以外の場所から先に刺激が出て心臓全体を収縮させる場合を期外収縮といいます。その臨時の刺激が心房から出る場合を心房性期外収縮、心室から出る場合を心室性期外収縮といいます。
期外収縮は、精神的緊張、疲労、喫煙、カフェインの摂取などで増えることがあります。どきっと
②第1度および第2度
房室ブロックとは、心房から心室への電気的刺激の伝導時間が延びたり、時々その刺激が伝導しなかったりする場合をいいます。単に伝導時間が延びる場合を第1度房室ブロック、時々その刺激が心室へ伝導しなくなる場合を第2度房室ブロックといいます。
第2度房室ブロックには、1拍ごとに伝導時間が徐々に延びていって最後に数拍に1回の割合で刺激が心室へ伝導しなくなるウェンケバッハ型と、伝導時間は延びませんが、数拍に1回、刺激が伝導しなくなるモービッツ型があります。
後述する完全房室ブロックに移行せず、また運動により房室伝導が正常になる場合には、問題はありません。
③WPW症候群
心房と心室の間は、房室結節以外の場所では弁によって電気の伝導が絶縁されているので、刺激が伝わりません。しかし、このWPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)では、図19のように心房から心室へ心筋の橋渡し(ケント束)があり、心房の刺激がわき道(バイパス)を通って早く一部の心室へ伝わります。この刺激による心室の収縮は、心電図上でデルタ波として認識されます。
後述する発作性上室性頻拍(じょうしつせいひんぱく)を合併しない場合には、とくに運動を制限する必要はありません。
④
右心室への刺激を伝える右脚の電気的伝導が、延長または途絶した場合を右脚ブロックといい、心電図の形の変化で診断できます。心臓に異常がない場合もありますし、先天性心疾患やその術後にみられる場合もあります。延長の程度によって、不完全右脚ブロックと完全右脚ブロックに分類しますが、左軸の偏位や房室ブロックを伴わない場合には大きな問題はありません。
⑤その他心配のない不整脈(
洞房結節のリズム自体が不整になるものに洞性不整脈があります。これは、小児の場合にはほとんどが呼吸性で、息を吸った時に脈が速くなり、吐いた時にゆっくりになるもので異常ではありません。
●要注意の不整脈
要注意の不整脈とは、放置すれば血圧低下から心不全や失神など重い症状を来す可能性のあるものです。このなかには、リズムが持続的に速くなる
以下に、小児でみられる主なものを説明します。
小児の頻拍では最も多いものです。心拍数が1分間に180以上になります。症状は動悸、顔面蒼白などで、失神することはまれです。持続時間は、数分から数時間以上になることもあります。安静時にも運動時にも起こりますが、個人でそれぞれ特徴がある場合もあります。
前述したWPW症候群では、心房房室結節心室ケント
息こらえや顔面を冷水につけたりすると頻拍が止まることもありますが、止まらない場合は薬剤を使用します。発作を繰り返す時は、発作予防に薬を内服しますが、それでも繰り返し現れる時はカテーテル治療を行うことがあります。
②
心室から刺激が出る頻拍症です。心室の収縮様式が大きく変わるので、頻拍中は血圧の低下によるふらつき、顔面蒼白や失神などを来すこともあります。多くは心筋症や心筋炎、
心室頻拍は基礎疾患の有無にかかわらず、運動中の突然死の主な原因と考えられています。治療法には、薬剤のほか、カテーテル治療などがあります。
第3度房室ブロックともいい、心房と心室の間の伝導が完全に途絶えた状態をいいます。この場合は、ブロックされた下の刺激伝導系から洞房結節の代わりに刺激が出て心室へ伝わりますが、1分間の心拍数が40~50程度になり、運動でも80~100程度にしか増えません。
小児では、心臓手術の合併症以外では先天性のことが多く、胎児期から発見されることがあります。無症状のこともありますが、心拍数が少ない場合は疲れやすいなどの心不全症状が現れたり、失神を起こすことがあります。症状が現れる場合には、ペースメーカー植え込みが必要になります。
④QT延長症候群
心電図のQT時間(心室筋が電気的に興奮している時間)が延長し、特殊な心室頻拍が現れた病歴があるか、またはその可能性のある場合をいいます。薬剤や血液の電解質の異常により起こる場合もありますが、小児の場合、多くは先天性で遺伝子の異常によるものです。
症状としては、運動や精神的緊張などが誘引となって特殊な心室頻拍が現れます。この心室頻拍は重症で失神を伴うことが多く、時に突然死となる危険があります。また、頻度は少ないのですが、睡眠中の徐脈が心室頻拍を誘発させるタイプもあります。原因不明で、とくに運動に関連した失神を繰り返す場合には、この疾患も念頭におく必要があります。
失神や心室性不整脈を伴うものは、
塚野 真也
心臓は筋肉でできていて、1分間に50~100回くらい収縮して、体中に血液を送るポンプです。心臓はとまることなく動いていますが、頭で考えて動かしているわけではなく、勝手に動き続けています。
それは、心臓の右上に弱い電気を出す
最も多いのは心臓に病気がある場合で、
心臓に病気がない健康な人でも、1日中心電図をつけていれば、必ずいくつかの不整脈がみつかります。このような軽い不整脈はまったく治療を必要としないわけで、大切なことはその不整脈が治療を必要とするかどうか、正確に診断することです。
不整脈は簡単にいえば、心臓の鼓動がすごく速くなったり(1分間に100回以上)、遅くなったり(50回以下)、リズムが乱れるもので、それに伴った自覚症状が現れます。
最も多い訴えは、ドキドキする、脈が飛ぶ感じがするという症状です。そのほかに、胸の痛みや圧迫感を感じることもあります。このような症状は脈が速くなったり、乱れたりした場合に多いようです。
逆に、脈が遅くなりすぎると、脳や体の血液の循環が悪くなって、全身の
しかし、まったく無症状の場合も多く、たまたま自分で脈に触れてみて乱れに気づいたり、健康診断で初めて見つかることも多いようです。
また突然、
脈のリズムが乱れる不整脈には、
期外収縮は、自分で脈に触れてみた時に、何回かに1回脈が抜けることで気づく場合がよくあります。比較的軽症で治療の必要がない場合も多いのですが、心筋梗塞、心不全など心臓の病気がある人は注意が必要です。
心房細動は、脈がバラバラになる不整脈で、自分で脈に触れてみると脈が乱れている、もしくはうまく脈が測れないという場合が多いようです。患者さんは加齢に伴い増加します。それ自体は命に関わることはありませんが、心臓のなかに血の塊ができて脳梗塞を起こしやすくなるため、血をサラサラにする薬をのんで脳梗塞の予防をします。
脈が速くなる不整脈には、
脈が遅くなる不整脈としては、洞不全(どうふぜん)症候群、房室(ぼうしつ)ブロックがあります。脈が1分間に40回以下になったり、5秒ほどとまってしまうこともあります。この時、脳に行く血流も停止し、ふらつき、めまい、失神を起こします。治療は、ペースメーカーという小さい機械を体に入れる簡単な手術をします。
このように不整脈は、治療が不要なものから命に関わるものまで、非常に多くの種類があります。まずは毎年の健康診断をきちんと受けること、そして健診で異常が見つかったり、胸の自覚症状があった際には循環器科、もしくは不整脈専門の外来を受診することをすすめます。
谷口 泰
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
日常的には心臓の打ち方や脈拍の周期の乱れをさすことが多いが,医学的には,心臓全体の興奮が刺激伝導系によって正常に保たれている場合を,正常洞調律といい,これ以外のすべての調律および伝導の異常を不整脈という。したがって,心拍が正常の頻度で規則的であっても,洞房結節以外から興奮が起こったり,心拍数の異常な増加や減少,伝導の速度に異常がある場合は不整脈とよばれる。
自覚症状としてまずあげられるのは動悸である。とくに期外収縮や頻脈の場合には,感じられることが多い。このほか不整脈に伴う症状には,胸部の不快感,胸痛,息切れなどがあり,種々の不快感や不安を伴うことも少なくない。また,頻脈や徐脈の著しい場合や,脈拍欠損が多いと,心拍出量が減少し,血圧の低下や循環障害を起こす。さらに高度の不整脈では,一過性の失神や痙攣(けいれん)発作がみられることがある。これをアダムズ=ストークス発作といい,このような症状を起こすものをアダムズ=ストークス症候群という。
種々のものがあり,いろいろに分類される。成人で心拍数100以上になる頻脈を伴う頻拍型と,50以下になる徐脈を伴う徐拍型に大別する分け方などがあるが,ここでは不整脈発生の機構と発生部位による分類に従って,以下解説する。
刺激伝導系は洞結節(洞房結節),房室結節(田原結節),房室束(ヒス束),左右の脚束,プルキンエ繊維から構成されている。心臓の拍動の引金となる刺激は洞結節の結節細胞(ペースメーカー)の律動的な電気的興奮として発生し,これが刺激伝導系を伝わって,心房,心室を収縮させていく。したがって,心臓の拍動の引金となる刺激の生成に異常が生じるか,刺激の伝達に異常が生じると,不整脈が起こる。
(1)刺激の生成異常 これには洞刺激生成異常,自動的刺激生成の発生,受動的刺激形成などがある。
(a)洞刺激生成異常 心拍動のペースメーカーである洞結節の調律,すなわち洞調律に変化をきたすもので,洞性頻脈,洞性徐脈,洞性不整脈,洞停止などがある。洞性頻脈sinus tachycardiaは洞調律が毎分100以上になるもので,精神的興奮や不安,運動,食事,発熱,疼痛といった生理的な原因によるもののほか,種々の心疾患,貧血,失血,甲状腺機能亢進症などによって起こる。心電図では,正常波形のP,QRS,T波が認められる。洞性徐脈sinus bradycardiaは洞調律が毎分50以下になるものであるが,健康人でも睡眠中にはみられることがあり,またスポーツをする人にもみられることがある。問題となるのは,洞調律が極端に減少して,毎分30以下になった場合であり,原因には迷走神経の過緊張,あるいは洞結節の退行性病変による場合がある。高度な場合にはめまいや失神などが生じる。洞性不整脈sinus arrhythmiaは洞性頻脈と洞性徐脈が周期的に現れるもので,迷走神経の緊張度の変動に伴って出現する。呼吸性不整脈が代表的なもので,この場合,吸気に伴って心拍数が増大し,呼気とともに減少する。幼児によくみられ,通常,治療の必要はない。洞停止sinus arrestは洞結節の自動調律能が一時的に停止するもので,代表的なものが洞不全症候群である。
(b)異所性刺激生成 これには,自動的刺激生成によるものと,受動的刺激生成によるものとがある。
自動的刺激生成は,大部分はリエントリーによるものである。リエントリーre-entryとは,再入ともいい,心臓内を興奮性のインパルスが伝導していく際,ある方向から到達した電気的興奮が再びループをつくって,もどってきて,興奮が起こる現象をいう。このような機序で発生する不整脈には,期外収縮,発作性頻拍,心房粗動,心房細動,心室粗動,心室細動などがある。
期外収縮は基本となる調律による収縮に先だって収縮が出現するもので,心房から起こる上室性期外収縮と,心室から起こる心室性期外収縮がある。いずれも,リエントリー回路を経て,興奮が正規の洞結節から伝わる興奮に先んじて伝わるために起こるものであるが,他の原因による場合もある。健康な人でも過労や精神的興奮,喫煙や飲酒などに際して起こることがあり,単発性のものや散発的なものの場合はとくに治療の必要はないが,数拍続けて起こる場合や心電図で異常がみられる場合は注意する必要がある。発作性頻拍にも,心房から起こる発作性上室性頻拍paroxysmal supraventricular tachycardia(PSTと略記)と,心室から起こる発作性心室性頻拍paroxysmal ventricular tachycardiaがある。ともに突然,期外収縮をもって発作が出現し,多少の休止期を伴って突然に終了する。大部分はリエントリー回路を経て興奮が伝達されることによる。一般に心室性頻拍のほうが重症とされ,背景に器質的な心疾患を有することが多い。上室性頻脈では,器質的心疾患を伴わないかぎり,長時間続いても心不全の原因となることはまれである。
心房粗動atrial flutterは心房が毎分200~400の頻度で規則正しく,細かく収縮する状態であり,心房細動atrial fibrillationは心房が全体の統一性を失って,不規則に細かく収縮する状態をいう。ともに,正常の心臓にみられることはまれで,基礎に種々の心疾患があるときにみられる。心室粗動ventricular flutter,心室細動ventricular fibrillationも心室における同様な状態であるが,心臓のポンプ作用を失った状態となるため,放置すればほとんど死に至る。心臓マッサージをはじめ救命措置が必要となることが多い。受動的刺激生成は洞結節の機能が停止した場合に起こるもので,下位の房室結節,さらにこれの機能も失われるとプルキンエ繊維の自動能が心拍を維持するようになる。房室結節の自動頻度は毎分40~50,プルキンエ繊維で20~30となる。
(2)伝導異常 これには種々の伝導のブロックと副伝導路形成などがある。ブロックblockとは,刺激伝導系のある部分,あるいは固有心筋との接合部で,興奮の伝達が停止あるいは著しく遅延する場合をいい,房室ブロックatrioventricular blockと脚ブロックなどがある。房室ブロックは心房・心室間の伝達が遅延あるいは停止した状態で,単に伝達が遅延しているものを第1度,ときどき刺激が伝わらなくなるものを第2度,完全に遮断されたものを第3度と分けられる。第1度は無症状のことが多く,第2度でも無症状のことが多いが,第3度では徐拍によるめまいやアダムズ=ストークス発作がみられる。
副伝導路形成は,本来の刺激伝導系とは別に心房・心室間に別の副伝導路が形成され,これによって刺激が回旋して頻拍を生じるもので,WPW症候群がその代表的な例である。
不整脈は健康な人でも一過性に生じることがあるが,心疾患の部分症状として起こることも多く,とくに急性心筋梗塞などでは,あらゆる種類の不整脈が起こる。また単純な不整脈でも,心疾患を悪化させる原因となりやすい。そこで不整脈の診断にあたっては,不整脈が起こっているときに,心電図検査を行うことが大切である。発作的な,あるいは一時的な不整脈の場合は,持続的に長時間の心電図記録を行ったり,コンピューターを用いた体表面電位図法,ヒス束心電図,カテーテルを用いた心臓電気生理検査などによって検討する。
不整脈には治療の必要なものと,放置してよいものがあり,(1)原因が明らかなもの,(2)重症不整脈で救命的治療が必要なもの,(3)重症不整脈に移行する恐れがあるもの,(4)動悸など自覚症状があるもの,(5)心疾患があって,不整脈によって悪化する可能性が高いものでは治療が必要である。しかし,上記の条件に合致しない場合は放置してもよい。
不整脈の治療はその原因や症状によって異なるが,抗不整脈剤による薬物療法,迷走神経刺激療法,人工ペースメーカー療法,徐細動器による電気的治療法などがある。
→心臓
執筆者:細田 瑳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
心臓の規則正しい収縮は、洞結節からの規則正しい刺激発生が正常な刺激伝導系を伝播(でんぱ)して心室筋に伝えられることによって維持されるが、不整脈とは、この正常な洞調律からの逸脱を意味し、その発生機序から刺激生成異常と刺激伝導異常の二つに大別される。刺激生成異常には、洞結節における刺激生成異常としての洞性頻脈、洞性徐脈、洞性不整脈と、洞結節以外からの刺激生成(異所性刺激生成)としての期外収縮、発作性頻拍、心房あるいは心室の粗動および細動、補充調律などがある。刺激伝導異常には、正常な刺激伝導系の障害による洞房ブロック、房室ブロック、脚(きゃく)ブロックと、異常な伝導路を刺激が伝播するWPW症候群がある。これらの不整脈のなかには、健常人にも現れてまったく治療を要しないものから、器質的心疾患に伴って現れてくるもの、さらに放置すれば数分以内に死亡する重篤な不整脈までさまざまなものがある。
健康診断などで偶然に発見された不整脈で心臓に器質的病変がなく、自覚症状もなければ、本人にも知らされず放置されることが多い。心臓に器質的異常があって不整脈が出現している場合には、基礎疾患に対する治療に加えて種々の抗不整脈剤が投与される。
[井上通敏]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)生活習慣病用語辞典について 情報
…1761年G.モルガーニによって記載され,19世紀に入ってアダムズR.Adams(1827),ストークスW.Stokes(1846)らによって報告されて,広く認められるようになった症候群。元来は,完全房室ブロックなど心ブロック(心臓の刺激伝導系における伝導障害)のある患者で,突然,心停止による脳循環不全が起こり,意識消失や全身痙攣(けいれん)が起こる病態をさしたが,現在では,心ブロック以外の不整脈や著しい血圧低下による一過性脳循環不全をも含めて総称している。原因は,上記の完全房室ブロックや洞房ブロック,洞停止などの心ブロックなどによる徐拍や,心室細動,心室頻拍,心房粗動の1対1伝導などの頻拍性不整脈によって心拍出量が激減し,一時的に脳循環不全となることによる。…
…1~2週間を無事に切り抜ければ,再発が起きないかぎり,順次活動範囲を広げて1~3ヵ月で社会復帰できるようになる。
[合併症]
最も多いのは不整脈で,約90%の例になんらかの不整脈が起こり,あらゆる種類のものがみられる。心室性期外収縮が最も多く,前壁梗塞では心房細動,心室頻脈などの頻拍性不整脈,下壁梗塞で房室ブロックなどの徐拍性不整脈が多くみられる。…
… 洞結節からきた興奮は房室結節においてやや遅く,房室束以下では非常に速く伝わるのが特徴的で,そのため,まず左右の心房が収縮し,血液が心室内に十分に送り込まれた時点でひきつづき左右の心室が収縮し,血液が動脈へ送り出されるしくみになっている。正常の洞調律は種々の病的条件により不整脈(異常調律)に移行する。これには多くの種類があり,その診断には心電図が役立つ。…
…そのなかには機能性のものもあるが,感染性心内膜炎を起こしやすい心疾患や,弁障害を併発しやすい心房あるいは心室中隔欠損などがある。
[治療と予後]
予後を決定する因子としては,(1)弁の侵され方が急性か慢性か,(2)障害等の部位と程度,(3)不整脈,塞栓,狭心症などの合併症の有無,(4)リウマチ熱や細菌性心内膜炎の再燃などが重視される。弁膜症の内科的な治療はおもに心不全の治療に対して行われる。…
… 心電図波形上の変化だけから,逆に心臓の障害を直ちに診断することは十分でなく,他の検査成績と総合して判断しなければならない。心電図波形は心周期ごとに同じ様式で繰り返すものであるから,脈拍リズムの変化(頻脈,徐脈,不整脈など)は直ちに判読できる。さらに不整脈の原因が洞房結節すなわち歩調とり部にあるか(洞性),心房や刺激伝導系あるいは心室にあるかを判別することができる。…
※「不整脈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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