翻訳|hemodialysis
急性または慢性の腎(じん)不全に対する治療法の一つ。患者の血液から過剰の水とタンパク質代謝の結果生じた窒素含有性老廃物を除去し、血漿(けっしょう)の酸塩基平衡と電解質濃度を改善させるように構成された溶液中に、管状の透析膜でつくったダイアライザー(透析器)を浸し、この中に患者の血液の一部を循環させ、主要な腎機能を代行させるもので、この血液透析を行う装置を人工腎臓という。
血液透析を行うには、患者から人工腎臓の回路へ動脈血を取り出し、透析された血液をふたたび患者に戻す場所を静脈側に設置しなければならない。この血液の出入口(ブラッド・アクセスblood access)はシャントshuntともよばれ、大腿(だいたい)静脈や内頸静脈に挿入したダブルルーメンというチューブを用いる一時的ブラッド・アクセスと、前腕部の皮下で、橈骨(とうこつ)動脈と橈側皮静脈とを吻合(ふんごう)して拡大した静脈に透析のたびに穿刺(せんし)する恒久的ブラッド・アクセス(内シャント)や人口血管を用いる方法がある。また、透析器は中空糸型(ホローファイバー型)がもっとも多く使用されている。なお、透析器の中で血液が凝固するのを防ぐため、ヘパリンを用いて凝固時間の延長が図られている。
血液透析は通常週に2~3回行い、1回の透析時間は3~5時間である。日本透析医学会の調査によれば、昼間透析が81.4%、夜間透析が15.2%、在宅透析が0.1%、腹膜透析が3.4%となっている(日本透析医学会統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況 2007年12月31日現在」2頁)。アメリカでは家庭で行う家庭透析が全透析患者の30%を占めている。慢性血液透析の問題点は、心不全、脳血管障害、感染症、骨合併症、技術的事故、貧血、心理的障害などである。
日本透析医学会によれば、日本全国の透析患者数は27万5119人で、導入患者の原疾患の第1位は糖尿病性腎症43.4%(前年より0.5%増)、第2位が慢性糸球(しきゅう)体腎炎で24.0%(1.6%減)、不明が10.2%(0.3%増)、腎硬化症が10.0%(0.6%増)であった。糖尿病性腎症と腎硬化症の割合が増加する傾向が持続し、慢性糸球体腎炎が減少している(日本透析医学会統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況 2007年12月31日現在」11頁)。週に2、3回血液透析を受けなければならないこと、社会活動がかなり制限を受けること、食事内容や飲水量が制限されることなど、腎移植に比べると難点が多く、さらに血液透析に要する費用も大きく、これによる医療費の増大が問題となっている。
[中村 宏]
『酒井清孝・酒井糾編『血液透析・血液濾過・血液灌流』(1993・南江堂)』▽『多川斉著『わかりやすい血液透析とCAPD』改訂第4版(2004・日本メディカルセンター)』▽『富野康日己編『血液透析患者の合併症と薬剤投与』(2006・南江堂)』▽『秋澤忠男編『やさしい透析患者の自己管理』改訂第3版(2007・医薬ジャーナル社)』▽『透析療法合同専門委員会編『血液浄化療法ハンドブック』改訂第5版(2008・協同医書出版社)』
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…腎不全のために,腎臓のもつ老廃物排出機能が著しく障害されたときに,透析器dialyzer(一般には人工腎臓という)を用いて,血液を透析,ろ(濾)過する方法をいう。血液透析hemodialysisともいう。1910年代から試験的に行われていたが,本格的に行われるようになったのは50年代以降である。…
※「血液透析」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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