ランカシャー(英語表記)Lancashire

翻訳|Lancashire

百科事典マイペディアの解説

ランカシャー

英国,イングランド北西部の州。ペニン山脈の西側で,西部のアイリッシュ海岸は肥沃な農業地帯。北部,東部は丘陵地帯。南東部にマンチェスターをはじめとする工業地帯が広がる。豊富な炭田,水運の便,湿潤な気候などの立地条件に恵まれ,産業革命以後,綿紡績工業の世界的な中心地となった。モアカム湾に臨むファーネス半島に鉄鉱石の産もあり,現在では造船,機械,化学,金属などの重工業も発展。1974年の行政区画の改編により,それまでの同州のうち,北西部はカンブリア州へ,南部はグレーター・マンチェスター,マージーサイド特別州,チェシャー州の三つに属するようになり,代わってそれまでのヨークシャー州の一部が編入された。州都プレストン。2903km2。117万1339人(2011)。
→関連項目イギリス

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世界大百科事典 第2版の解説

ランカシャー【Lancashire】

イギリス,イングランド北西部にある地方。1974年までのランカシャーは面積4862km2,人口510万6123(1971)の州を形成しており,東をペナイン山脈,西をアイリッシュ海にはさまれた地域で,北西部に湖水地方南部の山地を含んでいた。地形的には東部の石灰岩,石炭層からなるロッセンデール森などの丘陵と,西部から南部に横たわる砂岩のランカシャー平野に区分され,その間をマージー川,リブル川などが貫流する。

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大辞林 第三版の解説

ランカシャー【Lancashire】

イギリス、イングランド北西部のペニン山脈の西側を占める州、またその地方。豊かな石炭・鉄資源を背景に産業革命期には綿工業が発達し、現在では機械・化学などの工業も盛ん。中心都市はマンチェスターとリバプール。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ランカシャー
らんかしゃー
Lancashire

イギリス、イングランド北西部のカウンティ(県)。1971年の人口は約511万でイギリス総人口の約1割が含まれていたが、74年の地方行政改革でマンチェスター、リバプールなどの大都市圏が分離し、98年にはブラックバーンブラックプールの2地区がユニタリー・オーソリティー(一層制地方自治体)として分離し、面積2897平方キロメートル、人口113万4976(2001)となった。東はペニン山脈、西はアイリッシュ海に接し、大別すると東の丘陵部と西の平野部からなる。産業は、丘陵部の牧羊、平野部の酪農、野菜栽培など農牧業も盛んだが、イギリス最大の炭田があり、加えて発達した交通網に恵まれ、産業革命期には綿工業を中心に工業の飛躍的発展がみられ、多数の工業都市が出現した。マンチェスターは綿工業の世界的中心となり、綿花・穀物の輸入で発展した西の海港都市リバプールとは、1830年にリバプール・マンチェスター鉄道、1894年にマンチェスター運河で結ばれ、両都市はランカシャー発展の軸となった。綿工業は19世紀にランカシャー工業の大部分を占めたが、20世紀に入ると新しい工業の発展が始まった。とくに第二次世界大戦後は綿工業の衰退が著しく、電気機械、衣服、自動車、食品、精油などの工業が重要になってきた。[井内 昇]

歴史

ローマのブリテン島支配時代には、ランカスター、マンチェスターをはじめ何か所かのローマ人の拠点がこの地域に存在した。5世紀にローマ人が去ったあと、アングロ・サクソン人、さらにはデーン人がこの地域を支配し、とくに北部はイングランド王国への編入が遅れた。11世紀末に作成された土地台帳(ドゥームズデー・ブック)においては、ランカシャーの名前は現れず、南部はチェシャーと、北部はヨークシャーといっしょにされている。今日のランカシャーの地域が一つの所領(オナーhonour)にまとめられたのは1118年のことで、それ以来この地域はしばしば王族に与えられた。1267年にはヘンリー3世の次男エドマンドがランカスター伯に敍され、以後何人かのランカスター伯、ランカスター公がイングランドの政治に大きな影響を及ぼした。1399年、ランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの息子ヘンリーがランカスター朝初代の王(ヘンリー4世)となり、ランカスター公領は王領に復帰した。しかし公領は他の王領とは区別される特別な単位として存続し、ランカシャーは近代になっても法制上特異な扱いを受けた。
 しかしこの地域がイギリス近代史のうえで重要な役割を果たしたのは、経済的な側面においてであった。14世紀のペストや15世紀のばら戦争では大きな被害を受けたが、中世末から繊維工業が発展して、この地域は先進的な産業地帯となった。カトリック勢力が強い土地柄で、17世紀の市民革命期には王党派が有力となり、18世紀前半のジャコバイトの乱でも反乱派の動きが目だったが、18世紀後半からは産業革命の舞台となってイギリスの経済・社会をリードした。とくに、商港リバプールと炭田地帯を近くにもったマンチェスターでは、綿工業が大発展を遂げ、この町の動向が19世紀イギリスの政治を規定するとさえいわれるようになった。[青木 康]

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世界大百科事典内のランカシャーの言及

【イングランド】より

…(2)混合農業地帯 中世に二圃式・三圃式の共同耕地制が広範に普及していたミッドランズ地方やウェセックス丘陵などの中部漸移地帯は,現在でも小麦,大麦,エンバク,牧草の栽培と肉牛,豚の飼育による混合農業が盛んである。(3)酪農地帯 年降水量1000mm前後の西部湿潤地域を代表するのが酪農であり,ランカシャー・チェシャー平野,サマセット平野だけではなく,ミッドランズの丘陵部でもみられる。(4)放牧地帯 かつてケルト制度と呼ばれる粗放穀草式農業の地域であったペナイン山脈やコーンウォール半島では,湿潤な高原が永久草地として羊や肉牛の放牧に利用されている。…

【綿織物】より

…イギリスは伝統産業である毛織物業を保護するため,実効はあがらなかったものの,18世紀初頭までにインド綿布の輸入,使用を制限,禁止する法律(キャラコ禁止法)を制定せざるをえなかった。しかし産業革命期のイギリス工場制綿業は,ランカシャー綿布を登場させ,1820年ころインドへの逆流現象を生ぜしめた。以後,急激に増大した綿布流入によって,19世紀後半インドの在来綿業は広範な解体と再編をせまられた。…

※「ランカシャー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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