デジタル大辞泉 「地方」の意味・読み・例文・類語
ち‐ほう〔‐ハウ〕【地方】
2 首都などの大都市に対してそれ以外の土地。「
3 旧軍隊で、軍以外の一般社会をさす語。
[類語](1)区域・地区・地域・地帯・境・区画・土地・方面・一円・一帯・
( 1 )室町時代から江戸時代にかけては「ぢ(じ)かた」とも読まれ、江戸時代には町方に対することばとして農村や田舎を意味したり、田制や土地制度や民政一般をさしたりした。→じかた(地方)④。
( 2 )明治以降、ヨーロッパの制度を模倣した行政制度や中央集権的国家整備の下で必須のことばとなって「地方行政」「地方自治」「地方税」その他多くの複合語も生まれ、日常語としても急速に普及した。
室町幕府には京都内外の家屋,宅地,店舗,道路および訴訟に関する事務をつかさどる地方奉行があり,下って江戸時代には町方に対する田舎の地の義より転じて田制の意となり,さらに広義に土地および租税制度をさしたが,両者を分離することが困難なので総括して地方の制度と称し,さらにこの両者に関する政務一般,すなわち農政を地方と称するに至った。代官役所ではその事務処理のために地方,公事方(くじかた)の分課を置き,地方には地理,租税徴収・出納事務や帳簿作成などを掌握させた。地方勘定帳は代官所において毎年作成する租税を主とする決算帳簿である。なお,地方三帳は成箇郷帳(なりかごうちよう),年貢割付,年貢皆済目録の3帳をいい,貢租納入事務上重要な帳簿であった。また地方役人は代官およびその下僚の農政に携わる役人,地方書は農政に関する書物の総称,地方三役は村方三役ともいい,名主(庄屋),組頭,百姓代をさすなど,地方と冠する語は農政の意である。
執筆者:大野 瑞男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
室町時代、京都内外の地を地方(じかた)と称し、室町幕府の職名である「地方沙汰(さた)」「地方頭人(とうにん)」を略して地方と称した。江戸時代には、町方に対して田舎(いなか)、都市に対して農村を地方と称した。転じて、田制や土地制度、租税制度を地方の制度というようになり、さらに農民統治一般をも意味するようになった。土地制度や租税制度、農民統治一般を記した書物を地方書という。慶長(けいちょう)・寛永(かんえい)のころ(1596~1644)、幕府の直轄領を支配する役職に、郡奉行(こおりぶぎょう)と並んで地方奉行の名がみえるが、その後、地方奉行の名はみえなくなる。農民統治に優れた代官などを地方巧者と称した。
[川鍋定男]
江戸時代,町方に対して村方・田舎(いなか)をいう語。室町時代には京都の諸屋敷地,およびその訴訟を担当する職名だったが,江戸時代には村方・田舎の意となり,さらに土地制度・租税制度など農政一般をもさすようになった。大名から家臣に土地が授給される知行形態を地方知行,農民支配を担当する役人を地方役人,農民支配にたけた役人を地方巧者,村方で作成された公用文書を地方文書などという。また「地方凡例録」「地方落穂集」「民間省要」など農政一般について記された地方書が江戸中期以降多く著されるようになった。地方が農政一般をさす語として広く使われるようになったのは18世紀以降と思われる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…等質性,統一性などが識別される地域のほかに,政治・行政上その他の実用上指定された区域も地域と呼ばれることが多く,前者を実質地域または地理学的地域,後者を形式地域として区別することもある。地域の代替語あるいは類語には,地区,区域,領域,圏域,地帯,地方などがあるが,相互の使い分けは一定していない。また地域の複合語としては,地域住民,地域社会,地域主義,地域計画,地域指定,地域性,地域区分など多数のものがあり,法律用語においても地域概念の重要性が高まり,〈地域〉は現代社会に関するキーワードの一つとなっている。…
…江戸時代の地方書の一つ。全14巻。…
※「地方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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