ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「綿工業」の意味・わかりやすい解説 綿工業めんこうぎょうcotton manufacture 綿花から綿糸や綿布を生産する繊維工業の一部門。綿紡織工業。インドがその発祥の地といわれ,世界的には 18世紀以来のイギリス,ランカシャーの綿工業が知られる。日本における歴史は比較的に浅く,室町時代に綿の生産に関する文献がみられるが,近代的な工業として興ったのは幕末から明治にかけてである。薩摩藩主島津斉彬の輸入した織機2台に始り,トヨタ自動車の創始者豊田佐吉の自動織機発明などによって明治の中期以降,本格的に生産されたが,やがて『女工哀史』にみられるような女子従業者の悲惨な労働状況を生み,産業上の問題も引起した。その後 1950年代まで盛んに行われたが,レーヨン,ナイロンなどの人造繊維の普及につれて相対的にその地位が低下してきているうえ,近年は韓国,台湾などの新興勢力に追上げられている。とはいえ,化学工業で完全に綿製品と同質のものを生産しうる技術はまだ開発されておらず,純綿製品はその性能からして需要は多い。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報 Sponserd by