山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヴラフ」の解説
ヴラフ
vlah[ブルガリア,マケドニア],vlahi[ギリシア],ulah[トルコ]
バルカン半島南部地域のローマ化された先住民の他称。アルーマニア人(ârman)と自称し,ロマンス系アルーマニア語を母語とする。10世紀以降,ビザンツ史料に記述が現れるが,民族集団を示す呼称か,羊飼いを生業とする人々を示す呼称か論争がある。オスマン帝国統治期,羊飼いとしてだけでなく商人としてヨーロッパ各地で活動し,ギリシア文化を受容し知識人となる場合もあった。また,クレフティスやウスコクとして知られる山賊や海賊にはヴラフ出身者も多かった。ギリシア独立戦争や建国後のギリシア政治にかかわったり,イリンデン蜂起に参加する者もあった。今日,ギリシア北部やその周辺地域,バルカン以外の地域のディアスポラとして住んでいるが,同化傾向も強い。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報