山中において旅人などの通行人から財物を奪取する強盗,またその集団。山立(やまだち),山落(やまおとし)ともいう。日本の中世には《御成敗式目》のいわゆる〈大犯(だいぼん)三箇条〉の付則条項に〈夜討,強盗,山賊,海賊〉があげられているように,山賊は公権力が禁圧の対象とした最も重い犯罪の一つとされていた。実際にも地頭御家人が山賊を追捕して,恩賞地を給与されていることも知られる。いっぽう,中世前期の説話集などからは,山賊自身はその行為に対するそれほどの罪悪感がなく,またそれを重犯罪と考えない社会意識がなお存在したことが読みとれる。この時代には昼強盗と夜強盗が異なる犯罪とされていたように,強盗を行う場である山,海,市町,路次などに,その行為をささえる歴史的由来があり,たんなる強盗ではないという観念がこのような山賊に対する社会意識をたもたせていたのである。
〈山立〉という語が,山賊という意味と,狩人,またぎなど山を生活の場とする山民を指す語として存在したことからも知られるように,山賊は俗世間側が賊としたのであり,本来は山民の慣習に由来する。山という俗世間とは次元を異にする世界に入りこんだ俗界の人々から,山の神に対する捧げもの,通行税をとるのは当然とする論理が山民側に存在したのである。このことは,〈山落〉(落は奪取の意)という行為が,中世前期なお正当な行為として行為者に主張されていることからも明らかであり,やがてこの山落という語が山賊と同義語となっていく過程に,俗世界の側の論理の優越をみることが可能である。この山は,中世の逃散百姓が領主権力から逃れるために〈山に入る〉と表現された不入地であり,山の神が支配する聖なる領域であった。山と俗界の境界は,山神の祠などで厳密に区分されていたが,山立と狩人とをなお近しい関係ととらえている《塵芥集》では,この境界を路次より3里と法定している。
→義賊 →盗賊
執筆者:勝俣 鎮夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…【佐藤 久】
[レジスタンスにおけるマキ]
18世紀中葉,コルシカがフランスの統治下に入って以後,その支配や導入される新しい法秩序になじまず,それと衝突したり,また,旧来の社会的紐帯が揺らぐなかで,かつての共同体の掟の行使が私的な争闘に転化して犯罪者として追われる人びとが増加した。こうした人びとがしばしば島内のマキに隠れすみ,〈山賊〉化し,19世紀のロマン主義的風潮のなかで,ときに,義賊,英雄のイメージで描かれた。メリメの作品《コロンバ》(1840)や《マテオ・ファルコーネ》(1829)はとくに有名である。…
※「山賊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加