日本大百科全書(ニッポニカ) 「一職支配」の意味・わかりやすい解説
一職支配
いっしきしはい
戦国期から近世初頭にみられる支配の形態。同じく一職支配とよばれているが、内容的には次の二つに大きく分けて考えられている。
(1)戦国大名の一円知行(いちえんちぎょう)を受け、一国あるいは郡を単位とした地域的支配権のことで、織田(おだ)政権のもとで始められたもの。一円支配権として信長によって上から設定された。その支配権を与えられた部将たちの支配形態が研究史上一職支配とよばれている。
(2)領主および農民の一職所有のこと。中世の荘園(しょうえん)制においては、職の分化、すなわち権利や所有の関係が百姓職(ひゃくしょうしき)、作職(さくしき)、下作職(げさくしき)などというように、重層的に分化しているのが一般的で、そうした重層的な土地関係の清算がなされた段階の支配形態をいう。豊臣(とよとみ)秀吉が行った太閤検地(たいこうけんち)は、一つの土地に諸種の権利が重複していたそれまでの土地制度を改め、「作合(さくあい)」といった中間搾取を否定するものとして取り組まれたもので、領主・農民間の関係を単系化した政策として評価される。一職支配によって、荘園制下の複雑な土地制度は一掃された。
[小和田哲男]