法人その他の団体が解散した場合には,法律関係の跡始末をしなければならないが,そのための手続を清算という。この手続は団体の性質によって異なるし,その財産状態によっても異なることがある。
会社が解散してもただちに消滅はせず,清算手続に入る(ただし,合併の場合は解散と同時に消滅するから清算の必要はなく,破産の場合には破産手続によってなされる)。清算手続中の会社を清算会社という。清算の目的は会社の権利義務を処理して残余財産を株主や社員に分配することである。
株式会社では,会社債権者の保護をはかり大株主の横暴を防ぐため,会社の自治にゆだねられる任意清算は認められず,法律の規定による法定清算によらなければならない(商法417条以下)。法定清算には通常清算と特別清算とがあり,後者は清算の遂行に支障があるかまたは債務超過の疑いがあるときに,裁判所の監督の下で行われる(後述)。通常清算では,清算人(原則として取締役がなる)は現務を結了したうえ,債権を取り立て,各種の財産を換価し,こうして集めた金銭で会社債権者に対して弁済しなければならない。全債務を弁済した後,残余財産を株主にその持株数に応じて分配する。分配を終わったら株主総会に決算報告し,その承認を受けた後,清算結了の登記をする。実際には,順調に営業活動をしている会社が解散することは,合併を除いてほとんどないから,上述のような通常清算が満足に行われることはあまり多くない。有限会社の清算も上述の通常清算に準ずるが,特別清算の制度はない(有限会社法72~75条)。
合名会社・合資会社では,法定清算(商法120~135条,147条)のほか,任意清算も認められる(117,147条)。任意清算は総社員の意思に基づいてできるもので,たとえば,会社財産を現物のまま社員に分配するなどの方法をとることができ,また債務の弁済手続をとらずに結末をつけられるので,会社債権者保護のための特別な規定がある(117条3項,118条等)。
公益法人の場合,原則として理事が清算人となり,株式会社の通常清算に類似した手続が行われるが,残余財産についてはあらかじめ指定された帰属権者に引き渡され,もしそれがなければ主務管庁の許可を得て法人の目的に類似した目的のためにその財産の処分ができる(民法72~83条)。農業協同組合や中小企業等協同組合のような特別法上の組合については,それぞれの特別法上の規定のほか,民法や商法の規定が準用される。
執筆者:田村 諄之輔
すでに解散して清算中の株式会社につき,債務超過の疑いがあるなど清算に困難があるとき,債権者,清算人等の申立てまたは職権に基づく裁判所の命令によって開始される手続で,商法に規定されている(431条以下)。実質は一種の倒産処理手続である(倒産)。清算人が特別清算人となり,破産管財人と同様,裁判所の監督のもとに会社財産を管理・処分する。裁判所は必要に応じて,会社財産の保全処分,株主の名義書換えの禁止,不正をなした取締役等の責任免除の禁止や損害賠償の査定等を行うことができる。清算人は会社財産をもって債権者に支払える額を定め,これに応じた債権者の権利変更を内容とする協定の条件を策定する。これが債権者集会の4分の3の多数決で可決されると協定が成立し,清算人はその定めに従って弁済を行い,手続は終わる。協定の内容(5割免除など)は債権者に衡平なものでなければならない。協定成立の見込みがないときは裁判所は破産宣告をなし,破産手続に移行する。
執筆者:谷口 安平
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会社が解散によって本来の活動を停止したのち、その法律関係の後始末のためになされる手続。具体的には、現務の結了、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の分配を目的とする手続である(会社法481条、649条)。会社の場合に清算手続が行われるのは、合併または破産手続開始以外の原因で解散したとき、および設立無効判決・株式移転無効判決が確定したときである(同法475条)。その手続は清算会社として行われ、それは従前の会社と同一の法人格を有するが、清算の目的の範囲内においてのみ存在するにすぎない(同法476条、645条)。株式会社では、会社債権者の利益を保護するために、人的会社の場合のような任意清算(同法668条)は認められず、法定の手続によるべき法定清算のみが認められる。法定清算には、清算の遂行に特別の障害が予想されない場合に行われる通常清算(同法475条~509条)と、会社に債務超過等の疑いがある場合に裁判所の厳重な監督のもとに行われる特別清算(同法510条~574条)に分かれる。会社の清算事務は清算人(同法478条)によってなされ、すべての清算手続が結了すれば会社は消滅し、清算結了登記がなされる。
[戸田修三・福原紀彦]
『高野総合会計事務所編『ケース別会社解散・清算の税務と会計』(2007・税務研究会出版局)』
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