改訂新版 世界大百科事典 「万人坑」の意味・わかりやすい解説
万人坑 (まんにんこう)
wàn rén kēng
多くの死体を合葬した所という意味の中国語。日中戦争後半期,中国東北地方にあった日本側の鉱山や大工事の現場では,付近の破産した農民をはじめ,山東省,河北省などからつれてこられた者,懲役労働の囚人などが,増産命令のなかで酷使された。事故で死亡した者,栄養失調で死亡した者などの死体に加え,使いものにならなくなった者は生き埋めにされて,あちこちに万人坑ができた。白骨が折り重なっている現場が広く日本に伝えられたのは,本多勝一《中国の旅》(1971)によってである。本多が訪れた遼寧省大石橋マグネサイト鉱山の虎石溝万人坑の上には建物が建ち,参観できるようになっており,〈階級の苦しみを忘れまい〉という垂幕と参観者の寄せた花輪があったという。撫順炭鉱には約30の万人坑があるというが,東北全体にいくつあるのかは,まだ明らかにされていない。
執筆者:田中 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報