三命説(読み)さんめいせつ

改訂新版 世界大百科事典 「三命説」の意味・わかりやすい解説

三命説 (さんめいせつ)

中国で,命(運命)に三色すなわち受命と随命と遭命があるとする説。命を分類することは孟子や荘子にすでに見られるが,三命のかたちをとるようになるのは前漢末の緯書に始まり,後漢になってほぼ固定した。受命とは,《孝経緯援神契》に〈年寿を謂うなり〉と見えるとおり,寿命のこと。随命とは,行為の善悪に対して禍福が正しく対応し,善因善果,悪因悪果が理想的に現れるばあいである。遭命とは,〈善を行いて凶に遇う〉善事を行いながら不幸に遭遇し,因果の一致しないものをさす。後漢の王充が三命として正命・随命・遭命をあげ(《論衡》命義篇),正命とは,生まれつきよき命に恵まれた者は,善行をつんで善果を求めなくても自然に吉福が至るものと説いているのは,当時の異説であろう。命を三つに分類することは,命に対する関心が高かったことを物語り,幸福論に冷淡な儒教が盛んに行われた漢代にも,命すなわち吉凶禍福への関心は低くなかったことが知られる。
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