善悪(読み)ぜんあく

精選版 日本国語大辞典 「善悪」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐あく【善悪】

[1] 〘名〙 よいこととわるいこと。よしあし。邪正。また、善人悪人
※十七箇条憲法(604)「九曰、信是義本。毎事有信。其善悪成敗、要在于信
※仮名草子・浮世物語(1665頃)五「善悪(ゼンアク)を分たず、めた物に只可愛がるばかりにして」 〔史記‐夏本紀〕
[2] 〘副〙 よかれあしかれ。とにもかくにも。どうあろうとも。ぜひとも。
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「さては善悪(ゼンアク)為義まづ命を捨ててさう有るべきなり」
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下「それは何よりの御心ざしで御座らう。善悪頼み入候」
[語誌](1)古くは(一)のように名詞として使われることが一般的であったが、鎌倉時代初期から(二)のように副詞として使用される例が見られるようになる。この用法は、「付于善悪(善悪に付けて)」という慣用的表現の「付于」を省略することによって生じたもので、「是非」の副詞用法と同様に考えられる。なお、(二)の用法は、「是非」の副詞用法に押されるようになり、中世末から近世前半期には衰退する。
(2)連声(れんじょう)で「ぜんなく」「ぜんまく」とも発音される。→ぜんなくぜんまく

ぜん‐なく ‥アク【善悪】

(「ぜんあく」の連声)
[1] 〘名〙 善と悪。また、善人と悪人。
洒落本・両国栞(1771)「まち人とうやうぜんなくのうらなひ」
※二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉此一日「善悪(ゼンナク)も邪正もこれ迄なりと入ったる此道」
[2] 〘副〙 よいにせよわるいにせよ。ぜひ。ぜひとも。
風姿花伝(1400‐02頃)六「ぜんなくに、すまじき能あるべし」

ぜん‐まく ‥アク【善悪】

〘名〙 (「ぜんあく」の連声(れんじょう)) =ぜんあく(善悪)(一)
歎異抄(13C後)一一「善悪(ぜんまく)の二につきて、往生のたすけ、さはり、二様におもへば」

よし‐わるし【善悪】

〘名〙 (形動) 善いこと、または悪いこと。一得一失あること。善いか悪いかいずれともわからないこと。また、善いようでその実は悪いこと。また、そのさま。
雑俳替狂言(1702)「気の若ひ親を持てもよし悪し」

よかれ‐あしかれ【善悪】

〘副〙 よいにしろ悪いにしろ。よかろうと悪かろうと。善悪にかかわらず。どっちにしても。
※浄瑠璃・心中二枚絵草紙(1706頃)上「よかれあしかれ、おのれが冷にも熱気にもなる事か」

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デジタル大辞泉 「善悪」の意味・読み・例文・類語

ぜん‐あく【善悪】

連声れんじょうで「ぜんなく」「ぜんまく」とも》
[名]善と悪。よいこととわるいこと。また、善人と悪人。「善悪区別
[副]《「善であろうが悪であろうが」の意から》いずれにせよ。また、とにもかくにも。是が非でも。
「これからは、否でも応でもよい所へありつくるほどに、―お供申すぞ」〈虎清狂・猿座頭
[類語]是非正否当否可否可不可適否良否理非正邪曲直きょくちょく優劣よしあし

ぜん‐なく〔‐アク〕【善悪】

ぜんあく」の連声れんじょう

ぜん‐まく〔‐アク〕【善悪】

ぜんあく」の連声れんじょう

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普及版 字通 「善悪」の読み・字形・画数・意味

【善悪】ぜんあく

よしあし。〔楚辞離騒〕世、幽昧(いうまい)にして以て眩(げんえう)す 孰(たれ)か云ふ、余(われ)の善惡を察すと

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