内科学 第10版 「三尖弁閉鎖症」の解説
三尖弁閉鎖症(その他の先天性心疾患)
定義・頻度
右房と右室の交通が多くは筋性(ときに膜性)の閉鎖によって閉ざされた疾患である.心房-心室関係,心室-大血管関係,肺動脈狭窄の有無によって多様な形態・病態をとり得る.100万出生に対し79の発生率である.
発生機序
房室管の右方移動,右側成分形成が障害されることによって生じるとされている.
血行動態
心房-心室関係が正常の場合には体静脈還流は卵円孔もしくは心房中隔折損を通じて左室に流入し,心室-大血管関係に応じて大動脈・肺動脈へと送られる単心室型血行動態となる.チアノーゼは肺動脈血流の程度による.
徴候・診断
肺血流増加型では努力性呼吸,哺乳困難,体重増加不良により気づかれることがある(チアノーゼは目立たない).肺動脈血流減少型では明らかなチアノーゼや心雑音が出現する.肺動脈狭窄がない場合でも肺血管抵抗の上昇により肺血流が減少すれば,チアノーゼがみられる.肺血流増加型で心房間短絡が乏しい症例では,体静脈うっ血,拍出低下の心不全が主徴候となることもある.
管理・治療
チアノーゼ心不全といった症状を改善するとともに,最終手術となるFontan手術のために肺動脈血管抵抗,血管サイズを適正に保持することが目的となる.すなわち準備手術として肺血流増加型では肺動脈絞扼術が,また減少型では体動脈-肺動脈短絡が必要となる.Fontan手術は一期的に行われる場合もあるが,通常は段階的に(Glenn手術を経て)施行される.[山田 修]
■文献
Fontan F, Baudet E: Surgical repair of tricuspid atresia. Thorax, 26: 240-248, 1971.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報