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下流志向 かりゅうしこう

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知恵蔵2015の解説

下流志向

働かないことや学習しないことを誇りに思う新しいメンタリティー(考え方)のこと。内田樹が『下流志向』(講談社、2007年)で命名した。近年、社会的格差や若い世代の労働意欲の低下を問題視する議論が盛んだが、これまでの議論との違いは、学習しないことや労働しないことを気にせず、むしろ誇りに思うメンタリティーが出現したとする点である。内田によると、その背景には「自己決定」と「等価交換」を過大視する風潮がある。つまり、自分で決めたことならばどんな内容でも価値があると見なすことで、学習しなくても自信を持つことができる。また、不快やコストに対して直接の見返りがあること(等価交換)を当然視するために、一見無駄と思えることはあえて我慢して行おうとしなくなる、というのである。実証的に裏付けられた議論ではないが、例えば近年の教育の実学志向や資格志向には、等価交換を求める傾向が表れているように見える。しかし人生も社会も功利性だけで成り立ってはおらず、自己が決定したことならば何にでも価値があるというわけではない。贈与や他者への介入など無駄に見えるコストも必要である。これまで親密圏が提供してきたこれらのコストを、親密圏の範囲が縮小するなか、どのような形で再生するのかが問われている。

(野口勝三 京都精華大学助教授 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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