他者(読み)たしゃ(英語表記)das Andere

精選版 日本国語大辞典 「他者」の意味・読み・例文・類語

た‐しゃ【他者】

〘名〙 自分以外の者。また、あるものに対する他のもの。
小説方法(1948)〈伊藤整日本の方法「主格根本から分析して論理的に描かれるために、当然それは他者の姿でなければならないのだ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「他者」の意味・読み・例文・類語

た‐しゃ【他者】

自分以外のほかのもの。他人
哲学で、あるものに対する他のもの(他のあるもの)。自己に対してある何かあるもの。⇔自己
[類語]他人ひと余人よじん人様ひとさま

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「他者」の意味・わかりやすい解説

たしゃ【他者】

自己でないものが他者である。したがって,他者はつねに自己との関係もとで理解される。すなわち,自己を自己として認める際に,必ずそこに他者認定が介在しており,また他者を他者と了解する場合にも自己認識が介入していると言える。嬰児が生後8ヵ月ころから自我形成を行う際には,愛すべき他者としての母親認知が同時に並行して行われるのである。自己とのかかわりで他者を考えると,他者には人格的他者と非人格的他者との二つを区別することができる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「他者」の意味・わかりやすい解説

他者
たしゃ
das Andere

自己同一性を表す同一者や,統一を表す一者に対立する概念であるが,差異相違が知的な操作観念を表すのに比べて,他者はいっそう倫理的である。 G.-P.サルトルは人間存在を対他存在としてとらえ,自己と他者の根本的関係を羞恥 (しゅうち) ,愛,サド-マゾヒズム,憎悪などの葛藤 (かっとう) あるいは相克と考えたが,E.レヴィナスは,他者との関係における暴力の問題を突き詰め,暴力なき人間関係の可能性の条件を探求している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

道頓堀川

大阪府中部,大阪市の中央部にある運河。東横堀川から中央区の南部を東西に流れて木津川にいたる。全長約 2.5km。慶長17(1612)年河内国久宝寺村の安井道頓が着工,道頓の死後は従弟の安井道卜(どうぼ...

道頓堀川の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android